風が強く吹いている

著者 :
  • 新潮社 (2006年9月21日発売)
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本棚登録 : 6209
感想 : 1386
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 昨日図書館で借りたこの本を読み終わって、気づいたら本屋でこの本を買っていた。
 多分、この作品は私にとっての2012年上半期ベスト本になると思う・・・

 箱根駅伝って、陸上のエリート中のエリートの、そのまた選ばれたエリートが走る場所だと思ってた。才能あふれるアスリート大学生がちょろっと努力して、そんでもってプレイしてる、そんなイメージだった。でも、そんな彼らだって、この10人のように、血を吐くくらいの努力をして辿りついた地なんだろうな。私は今まで間違った認識を持っていた。それに気づかされた。

 個人的には、復路のユキ、ニコチャン、キングのくだりが一番泣けた。彼らはこの箱根駅伝を最後に長距離をおしまいにする。理由はそれぞれだけど、彼らは走りながらハイジや走や青竹荘の面々に感謝の意を表す。もう、そのくだりが泣けて泣けて・・・今思い出しても泣けるくらい・・・

ユキ(第6走者 山くだり区間)「走、お前はずいぶん、さびしい場所にいるんだね。今日でおしまい。だけど最初で最後にこのスピードを味わえてよかった。」
ニコチャン「走のように、選ばれ祝福されたランナーになりたいものだと、ニコチャンは心から願ったが、それは果たされるべくもない望みだ。でも、まあいいじゃねえか、とニコチャンは思う。選ばれなくても、走りを愛することはできる。抑えがたく愛しいと感じる心のありようは、走るという行為がはらむ孤独と自由に似て、ニコチャンの内に燦然と輝く。それを手に入れられたのだから。」
キング「俺は、こんなに、だれかと濃密に過ごせたと思ったことはなかった。一緒に、心から笑ったり怒ったりしたことはなかった。たぶんこれからもないだろう。ずっとあとになって、俺はきっと、この一年を懐かしく思い返す」
 
 うつくしくきらきらした彼らと寄り添えて、私は本当に幸福だった。こんな私も、きらきらと永遠に輝く、とても大切なものを少しだけもらえたと思う。彼らと同じような思いを味わえるなら、それがたとえつらく苦しい日々であったとしても、耐えて乗り越える価値はあるのだと思える。

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: 三浦しをん
感想投稿日 : 2012年2月28日
本棚登録日 : 2012年2月24日

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コメント 10件

bluebird-ryuryuさんのコメント
2012/08/24

陸上競技が背景となっている小説なんですね!!

私自身、学生時代は、ずっと陸上部だったので、もしかしたら共感できるところが多く見つかるような気がします。

今、読んでいる、三浦しをんの『舟を編む』を読み終えた次は、
『風が強く吹いている』をぜひ読みたいと思います。

bluebird-ryuryuさんのコメント
2012/09/29

おひさしぶりです。
あやこさんのレビューをきっかけに、私もこの小説を読みました!

主人公の走を、自分自身と所々重ね合わせつつ、私もレビューの方を書いてみました。

『風が強く吹いている』は、私のお気に入りの小説TOP5に入りそうです!

kwosaさんのコメント
2013/01/09

ayakoo80000さん

フォローとコメントありがとうございます。

僕もこの本から大切なものをもらいました。
そして ayakoo80000さんのレビューからも力をもらいました。

本棚のラインナップが素敵ですね。
これからもよろしくお願いします。

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/03/08

「2012年上半期ベスト本になると思う・・・」
この一行で充分(この本も積読中なので)、読みたいに読むのが追いつかないのです。。。

HNGSKさんのコメント
2013/03/08

ブルーバードさん>>おー、ブルーバードさんも、この作品をお読みになった!!それはよかった。また、語りたいですね。

HNGSKさんのコメント
2013/03/08

kwosaさん>>ほめてもらえて嬉しいです。
こちらこそ、これからもよろしくお願いします。

HNGSKさんのコメント
2013/03/08

にゃんこさん>>にゃんこさんも、この本は積読作品なんですね。
しをんさんの作品は、どれも大好きなのですが、やはりこれは群を抜いています。
私の中で、別格です。

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/04/08

「やはりこれは群を抜いています。」
三浦しをんの作品は、エッセイと小説を交互に読んでいるのですが、何を読むかは、その時適当に手に取ったモノにしていて「風が強く吹いている」は後になっちゃってます。。。今手元にある三浦しをん積読はコレと「格闘する者に○」なので、多分次ぎに読みます(あっアンソロジー「シティ・マラソンズ」もあった)。

HNGSKさんのコメント
2013/04/08

にゃんこさん>>読んでください!!

風太郎さんのコメント
2013/11/20

こんにちは。風太郎です。
コメントありがとうございます。
この作品のように素敵な本と出会える喜びを分かち合えて嬉しかったです。

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