はじめから鳥肌たちっぱなしの涙腺緩みっぱなしでそのまま終わった。島本理生さんの新刊は、デビュー作のシルエット、ナラタージュ、波打ち際の蛍、君が降る日、がすきな人には大満足であろう作品に仕上がっています。わたしは著者の、とくに上記にあげた作品が大好きなので、読みはじめからその世界観に感動しっぱなし。読むというよりも感じる作品。少女漫画みたいな。恋愛小説。甘酸っぱいなー。
うまれつき顔に痣のあるアイコは出版社で働く友人の頼みで顔に痣のあるひとたちのルポルタージュの取材を依頼される。そのルポルタージュは反響が良く、やがて実写化へとなり、そこで映画監督の飛坂さんと出逢い、23歳の遅い初恋を経験することになる。
島本作品の男性っていいですよね。なんかダメなのにダメに感じさせないし、あなたとか、キミとか呼ぶ感じ。とても気持ちの良い敬語、丁寧語。そして優しいの。欲しい言葉をくれる感じがたまらない。
はじめての贈り物で高級なアンティークの手鏡を贈った飛坂さん。それをいともかんたんに夜の交差点の真ん中で投げてアイコに渡す! うわー。痣のあるアイコに手鏡なんて、と思うけれどその後の飛坂さんの感じとかとても良い。
あと一緒に歩いているときにアイコが痣のことを通行人の男の子に嫌な感じで言われたときにその男に向かって謝罪を要求するところ。そしてそのあとに
「一緒のときに、あなたが悪く言われたら、反論する責任は僕にはあるでしょう。一緒にいるっていうのは、相手を肯定しながら、同じ場所にいることなんだからさ。それは立派な理由だし、責任だ」
うわーうわーうわー。たまらん。
飛坂さんだけでなく、たとえばアイコの大学院の教授や、E.T.と呼ばれる後輩の原田くんとか、みんないい。嫌な感じのひとが皆無だし、たとえば嫌な感じのひとがいてもさらっとしてるところがよい。
よーく読んじゃうと、んんん? と疑問に浮かぶ描写とかあるけれど、あんまり考えないでただ感じるままに島本さんの作品は読んで欲しい。読んで、脳に言葉が入ってくまま、そのままなみだ止まらなくなります。やっぱ大好きです。大満足。
- 感想投稿日 : 2013年5月21日
- 読了日 : 2013年5月21日
- 本棚登録日 : 2013年3月19日
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