空白を満たしなさい [Kindle]

著者 :
  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • 嫌悪感を抱きながらの序盤から、清々しい読後感へ。うん、『空白は満たされた』。 描かれる死生観や、テーマとなる“分人”の考え方にも納得。対人関係ごとの分人を、お互いに見守る。常にこれが出来れば、寛容性にある自分で居られる。…難しいがしかし。

  • 全国各地で、死んだ人間が生き返るという現象が起きていた。
    徹生も3年前に自殺したが、生き返った。
    「幸せだったはずなのに、自殺するはずがない。あいつに殺されたに違いない」
    自分が死んだ本当の原因を調べ始めた徹生が、辿り着いた真実とは…?

    死ぬ直前の空白の記憶を取り戻したい。
    物心つく前に死んでしまった父との空白の関係。
    妻と子供と、自分の間にできた3年の空白を埋めたい。。
    せっかく生き返っても、すぐにまた死ぬかもしれない。愛する妻と子供の心に、再び空白を作らないようにしたい。
    家族や友人の理解と協力で、少しずつ空白を埋めていく徹生。

    一人の人間の中にはいろんな自分がいる。家族と一緒のときの自分。職場の中での自分。仲の良い友人との自分…。
    他者との関わりによって、いくつもの自分(「分人」)が形作られていく。
    いくつもの「分人」を認めること。そして、拒絶したくなるような「分人」であっても、「分人」同志で見守りあうことができていれば、徹生も自殺しなくて済んだかもしれない。

    これからどうなるの?という感じで、物語は終わっている。
    希望を残したいのだろうけれど、なんだかモヤモヤ。

  • 平野啓一郎氏( @hiranok )著。

    文句なしに面白い。
    分人(詳しくは「私とは何か」)っていう考え方を元にして書かれている小説で、特に人間関係に関してすごく楽に、前向きになれる本。
    とにかく是非読んでみてほしい1冊。

  • ひとりの人間の中に沢山の分人がいるという考え方をもってすれば、過去どれぐらい多くのことで救われ悩まなくてもいいことがあったか。早くこの考え方に出会いたかった。

  • 自殺から生き返った男の葛藤を描いていて重いテーマだと思いましたが、死生観、そして死というものがもたらす残されたものたちへの影響について考えさせられました。生から死のベクトルでものを見がちですが、死から生というものを見るということもある意味大事なのかなと。「私とは何か」を先に読んでいた事もあって分人という考え方が更に身にしみました。

  • 「自殺」を分人の概念をつかって考え直す小説。結婚式でつがれ続けるお酒を例に、幸せの絶頂のはずでも苦しいときはある、ということを示されたのが印象的だったかな。復生者の設定なども新しくて面白い。

  • 読書の後は余韻が残るものだが、これは限りない空白を残された感じだった。
    読み進めていくうちにきちんと空白を満たしてもらっていたと思ったのに、最後には埋めようのない空白が。
    変に匂わせる余韻よりも、ずっと清々しい空白だ。

    わたしにとって小説の醍醐味は共感、言語化の快感だったが、この小説にはとても具体的な救いを提示してもらった。

    自分の中にはっきりと分人を意識すると(しかもそれは一人の時にも出来る)今まで気付いてすらいなかった窮屈から解放される。
    人生のこれからに光を見た気さえする。

    始めから終わりまで、考えてもどうにもならない先の不安や答えの出ないことのてんこ盛りなのに、始めは暗く絶望的なのに対して、だんだんと希望が見えてくるのが不思議だった。

    景色や空気の丁寧な描写がとても素晴らしくて、映画でも見ているようにしっかりと頭のなかに映し出された。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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