果たして地獄は、美しい妹への普通ではない恋情からの背徳なのだろうか。
ふたりが背いたのは一体なんだったのか。
手紙の差出人は二人→太郎→太郎とアヤコとなっている。言葉づかいから考えると第一・第二の手紙が「私」というアヤコではない誰かであることが窺える。第三の手紙はカタカナ書きだからわからない。アヤコの名前もなぜかカタカナ書き。しかも主語は「私」ではなく「ボクタチ」である。第三の手紙の性質が鮮やかにこれら手紙の存在をうやむやにする。
そもそも遭難したのはひとりだったのかもしれないとも考えられる。
いろんなことを想像できた。
一文一文の情報量が信じられないぐらい濃密で、繰り返し読むほど、情景が浮かび、余計にわからなくなる。わからないから作中の手紙を繰り返し読んでしまうし、繰り返し読むと新しいことを発見してしまう。
瓶詰地獄ならぬ堂々巡りの地獄であった。
瓶詰地獄で彷徨うのは作中の人物ではなく読者の方なのか。
そもそも謎を抜きにしても、思わず繰り返し読みたくなるほどに面白いのが、この作品の真の魅力だと思う。また、10分程度で読めてしまう手頃さもこの作品の良いところだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年7月16日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2022年7月16日
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