誰か―Somebody (文春文庫)

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本棚登録 : 6483
レビュー : 588
著者 :
azuki1062さん  未設定  読み終わった 

杉村三郎シリーズ、記念すべき第1弾。
宮部みゆきは語りが巧いなぁとしきりに感服しました。デティールまで手を抜かないし、どの人物もいきいきと描かれているため、奥行きのある世界観になっています。

今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たち(聡美、梨子)の相談を受ける。亡き父について本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生をたどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める…。

派手な作品ではありませんが、紡がれる丁寧な描写によって、ぐいぐい引き込んでくれます。生真面目で心配性な姉の梶田聡美と、直情的で利発な妹の梨子が対照的。梨子のアイスティーを「ずずず」とストローで吸う場面であったり、カバンを「でん」と勢いよく置くところなど、細部の擬音の使い方が彼女の性格をよく表しています。だから現代ミステリーなのだけれど、生活場面の描写を読んでいる最中も楽しい。

梶田信夫を轢いた自転車の人物が逃走したため、本の出版により犯人を捜し出せないかと意気込む梨子。一方、姉の聡美は自身が4歳のときに誘拐された事件と、父の事故死が関係しているのではないかと訝る。
杉村は警察でも探偵でもない、お人好しのサラリーマンなので、事件の真相を直接的に暴いていくわけではありません。むしろ今多コンツェルンの娘婿という「逆玉の輿」と周囲から揶揄される弱めの立場。微力ながらも、徐々に真相に肉薄していくところは、いわゆる「名探偵もの」にはない説得力があります。
また、終盤まで淡々としているのかなと思いきや、現実の逆襲というか、手厳しい展開が待っていますが、そこは読んでのお楽しみということで。

レビュー投稿日
2019年1月15日
読了日
2019年1月15日
本棚登録日
2019年1月15日
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