偶然の祝福 (角川文庫)

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本棚登録 : 2038
レビュー : 278
著者 :
azzurro20さん その他 国内作家   読み終わった 

再読。
夢と現の境界線が曖昧な寓話の様な7つの短編。
"私"は少し特殊な生い立ちのせいか幼い頃から胸の内に孤独を抱えた女の子で、その"私"を現に繋ぎとめていたのが彼女の弟やキリコさんの存在だった。
母親に顧みられない幼い"私"を魔法のように救け慈しんでくれたキリコさんはわずか1年ほどである出来事の責任を問われやめされられ、バラバラの家族の鎹であった弟の死で"私"と両親を繋ぐものはなくなってしまう。
弟の死を機に"私"は彼方と此方を行ったり来たりするようになってしまう。
ともすると彼方の世界に沈み込んでしまいそうになる"私"を現である此方側に引き戻してくれるのは、バスで乗り合わせる女性であったり、偽物の弟であったり、アナスタシアと名乗る老女であったり… どう考えても彼方側の住人と思われる人物たち。
そして、まだ幼く言葉を発することも出来ない息子と、飼い犬のアポロ。
息子とアポロの描写には穏やかで温かな陽だまりのような幸福を感じる。

作品の全体を通して、かなりヘビーな人生を送っている"私"の物語は常に穏やかに静かに進行していてドラマチックさはないけれど、美しい文章に心を掴んで離さない魅力がある。

レビュー投稿日
2015年8月10日
読了日
2015年8月10日
本棚登録日
2015年8月9日
2
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