三つ編み

  • 早川書房 (2019年4月18日発売)
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インドのバドラプールでカースト制度の枠外である「不可触民」ダリットとして生きるスミタ。
イタリアのシチリアで家業のかつら製作に従事するジュリア。
カナダのモントリオールで、競争を勝ち抜き女性初のアソシエイト弁護士として働くシングルマザーのサラ。
彼女たちの人生の挫折と希望を三つ編みのように交差させながら、一つの物語が紡ぎ出されていく。

三人の女性は、環境や立場は違えど、皆女性であるための苦労を強いられている。
スミタは、女性が男の所有物として扱われる社会の中で、さらに人間として認められていない「不可触民」として他人の糞便を素手で拾い集める仕事をしている。彼女は自分の娘だけには同じような生活を送ってほしくない、となけなしの金をはたいて娘を学校に通わせるが、娘は先生にひどい辱めを受け、学校に通えなくなってしまう。
父が突然の事故で亡くなってしまい、借金まみれの工房を背負うことになったジュリアは、男社会の中で家族を養うために金持ちの男との結婚を迫られるが、彼女には初めて自分から好きになった男性がいた。
サラは、男性優位の事務所の中で家族との時間を犠牲にしてまで仕事を優先してきたが、突然がんの告知を受け、これまで築き上げてきた地位を奪われる。
苦境に立たされた彼女たちは、それでも自分の過酷な運命に立ち向かうべく行動する。

感情的な表現を廃した客観的な視点で描いており、ドキュメンタリー映画を観ているような印象を持った。三人の人生が「三つ編み」というキーワードのもと、徐々に一つになっていく構成は見事で美しくまとめられている。ただ、個人的に小説としては描き込み方が足りないような気がして、少し物足りなさを感じた。

著者は映画監督、脚本家、女優の三つの肩書を持つ女性で、当初から映像化を念頭に置いて描いていたように感じられる。映画化がすすめられている(現時点ではもう映画化されているかも)そうなので、映像でどのように描かれるのか、興味は持っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外の小説
感想投稿日 : 2022年6月19日
読了日 : 2022年6月5日
本棚登録日 : 2022年6月19日

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