資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来

制作 : 梶谷懐 
  • みすず書房 (2021年6月18日発売)
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感想 : 23
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タイトルからすると資本主義礼賛本に見えるが、目次で惹きつけら得て手に取ってみた。読みにくい箇所はあるが、得るものは多かった。いまの資本主義を批判的に考察しつつ、代替がないなかで現実的な展望を示してくれる後半は読み応えあり。

前半のアメリカ型のリベラル能力資本主義と、中国型の政治的資本主義の分類はわかりやすい。さらに西側の価値観でいずれ中国型は崩壊するorアメリカ型に集約するというスタンスはとっていない。いずれも課題を抱えつつ生き延びている。後者はソフトバワーが乏しく、「輸出」できるかが課題。なお、昨今はやりの共産主義の見直しについては、著者はばっさり切って捨てており小気味よい。

後半に出てくる、家庭や個人にまで資本主義が入り込んでいるとの指摘は視座として大事にしたい。と同時に、人間の幸福につながるかというアダム・スミスの問題意識を引用しながら何度も問いかける姿勢にも同感する。

資本主義は無限の膨張を続ける。資本主義が自分の体内に入ってきたとき、「抗体」的なものを体内にあわせ持たないと、心の均衡を保つのが難しいのではないかと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経済学
感想投稿日 : 2022年3月13日
読了日 : 2022年3月13日
本棚登録日 : 2021年7月2日

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