小倉昌男 経営学

  • 日経BP社 (1999年10月1日発売)
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クロネコヤマトの宅急便を生み出した小倉昌男氏の唯一の著書。一言で言うと痛快な経営の本だった。

過去の決断の背景、気持ち、考えを明らかにしている。サクセスストーリーを書く気はない、乏しい頭で私はどう考えたか、それだけを正直に書くつもりである、と著者はまえがきで書いている。

冒頭のエピソードは長年の取引があったり三越との事業からの撤退から始まり、理不尽なことに対しては一切筋を曲げない小倉氏の姿勢が描かれる。ここでまず引き込まれる。

日本一のトラック会社を受け継いだが時代の変化をしっかり捉えて、役員全員が反対した宅急便事業を軌道に乗せる。その間の黒字化に至るまでの不安も吐露されている。

信念の人であるが、外の目線は常に持ち続けている。外部からマーケティングの思想を学んだり、吉野家の単品経営を参照したり、マンハッタンでUPSのトラックを見て確信を持ったり、各地にアンテナを張り巡らす姿勢はとても印象深い。

この本の痛快さを2つ挙げるとすれば、運輸省との闘いと現場社員の自発性を促す仕組みづくりだろう。
前者は、「規制行政が時代遅れになっていることすら認識できない運輸省の役人の頭の悪さにはあきれるばかり」「倫理観のひとかけらもない運輸省などない方がいい」と切り捨てる。

他方、労働組合の意欲を引き出し、「セールスドライバーは寿司職人」という。全員経営という言葉を小倉氏は使うが、こういう経営者のもとでは従業員もやりがいを感じるだろう。

最後のリーダーの10の条件を含めて、様々な学びにあふれている。読後感もとてもよい。過去に読んだ経営書の中では5本の指に入る本だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 経営学
感想投稿日 : 2024年5月19日
読了日 : 2024年5月11日
本棚登録日 : 2024年4月27日

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