或る少女の死まで 他二篇 (岩波文庫 緑 66-1)

著者 :
  • 岩波書店 (2003年11月14日発売)
3.66
  • (34)
  • (52)
  • (77)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 563
感想 : 49
5

今夏は暑さと疲労でぐったりしていた。そんな時ページを開くと、そっとあたたかいお茶を差し出されるようなおだやかな気持ちになった。純粋に沁みた。親しいひとは世界から奪られてゆく、と感じていた室生犀星。虚脱感が通奏低音のように鳴りひびく。寺に住み、いつも室で詩を創作しているようなもろく繊細な心の持ち主が、時にひとを憎悪し激情にかられる。その二面性に共感した。風景描写や心理描写がちりばめられた自叙伝。いずれ詩集も読もうと思う。さあ、ひとつ、秋の楽しみができた。

p58
私はだんだん自分の親しいものが、この世界から奪られてゆくのを感じた。しまいに魂までが裸にされるような寒さを今は自分のすべての感覚にさえかんじていた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 岩波文庫
感想投稿日 : 2020年8月23日
読了日 : 2020年8月23日
本棚登録日 : 2020年8月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする