この本は二部構成になっており、第一部は福島県内の高校教師であり俳人の中村先生、第二部は震災に関わる具体的なデータをもとに教育学者の大森先生が執筆している。
臨場感あふれる中村先生の文章と、客観的なデータをあわせて読むことによって、テレビやネットからでは知ることのできなかった震災後の福島の教育現場のことを、非常に立体的に知ることができた。
避難時の混乱、放射線量について大人たちが不安を抱く一方で砂埃をあげて屋外の部活を楽しむ子供達の無邪気さ、「震災について何も言わない方がいい」という文芸部の生徒たちの暗黙の認識、「もう一回(原発が)ドカンとなっちまった方がすっきりする」という生徒の叫び。どれも、息をのむような事実だった。
震災にまつわる出来事から作られた中村先生の短歌がいくつか載っている。
限定された文字数だからこそ、その中に込められた想いや現状がはち切れそうなほどで、胸に迫った。
また、このような一生に一度あるかないかの大惨事に巻き込まれ、やはりこれを文学として表さないわけにはいけないのではないか、という中村先生の考えは力強いものだった。文学だけでなく芸術も含めて、何かを生み出す者の性を感じた。
ときに迷いながらも生徒とともに歩んでいこうとするこのような先生が自分の周りにいてくれたらとても嬉しいだろうと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
新書
- 感想投稿日 : 2018年4月14日
- 読了日 : 2018年3月31日
- 本棚登録日 : 2018年4月14日
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