はっとりさんちの狩猟な毎日

  • 河出書房新社 (2019年5月22日発売)
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やっぱりな。というのが感想。奇人の連れ合いは常識人。じゃないと家庭が崩壊する。
小雪さんは、大学ワンゲル部の部長だったのだから、夫のすごさも理解できるし、適応能力もある。文祥さんが惚れ込んで結婚しただけのことはあるなあ、と。
しかし、こういう夫を持つ苦しさも描かれている。
1か月もほぼ音信不通の状態で山にいる夫。幼い子ども二人と、心配しながらも日常に追われる日々。やっと夫が帰ってきて、不満を愚痴りたい気持ちをぐっとこらえて、「あなたが留守の間、大変だったんだよ」と言ったら、すかさず「いや、俺のほうが絶対大変だった」って。(p33)
いや、もちろん命がけの冒険をしてたんだからその通りでしょうよ。でも、自分一人で幼児を世話する1か月も、命の危険はなくても、かなりストレスフルで疲れる。そこは労ってくれてもいいんじゃないか。夫であり父親であるんだから。
最初の頃は夫が出掛けると心配で不安な毎日を過ごしたが、だんだんいなくなるとホッとするというのも、あるあるだな。
でも、基本的に自然や自給自足、持続可能な生活が好きという共通点があるし、文祥さんがぶれない信条を持ち、変人ではあっても知的で愛情深い人だから、夫婦を続けていけるのだろう。
たた、父親がキョーレツすぎると子どもは「自分は普通だ」と思うから、大変かもしれない。
服部家の末っ子が、ニトリでインテリアを揃えたい、ハワイ旅行して将来は積水ハウスに住みたい(p127)と言う気持ちもわかる。平凡な親だと、子どもは「あの人何が楽しいんだろう、もっと破天荒に生きられないのか」なんて思うものだが、破天荒な親だと「どうしてもっと普通に生きられないのか」と思うもんなのね。
イラストもとても良かった。ペンの輪郭に色鉛筆で彩色してあり、小雪さんの柔らかな人柄が伝わる。美大出てるので、デッサン力も確か。文祥さんがそっくりなので、子どもたちやご本人も本当にこんな感じなんだろう。

結婚するとき、妻の姓にしたのは、文祥さんが「男女関係なく格好いいほうの姓を選ぶべきだ」という考えだったから、と書いてあった。(p15)そういうところは、格好いいな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年4月12日
読了日 : 2021年4月12日
本棚登録日 : 2021年4月12日

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