舞姫打鈴 銀葉亭茶話 (銀葉亭茶話シリーズ) (コバルト文庫)

著者 :
  • 集英社 (1994年11月2日発売)
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本棚登録 : 129
感想 : 14
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仙人や神様が暮らす仙境にある茶店「銀葉亭」。
主の李氏のところには茶店らしくいろんな方の物語が持ち込まれるという設定のファンタジーといったところ。
いくつかシリーズが出ているけれど、いつものように気にいった巻しか手元にない。これはその中のお気に入りの一つ。

今回のお話の主役は処女雪を統べる風精の「雪華(そら)公主」が人間であったときの話。

新羅(しるら)の公主(王様の娘?)として生を受けた雪華。舞は天賦の才を持ち、馬を愛していたがいつも孤独な瞳をしていた。「なぜ自分は孤独なのか?何故自分は不安なのか?」と自分でもそれがわからない雪華。
新羅には美しい公主とともに自慢するものがもう一つ。それは金庚信(きん・ゆしん)将軍。還暦(60才)を迎える勇将ではあるが新羅のために尽力し、また幾多の困難な戦も乗り越えてきた神に愛された人。雪華にとっては叔父にあたる人である。
ある日遠乗りに出かけた雪華と庚信たちはある寺で休憩する。そこは「天官寺」という名前で庚信ゆかりの寺だった。そこで雪華は自分の前世がを思い出して倒れる。

40年前、「天官(ちょんがん)」という舞の秀でた妓生(きーせん)⇒(妓生は今でいう芸妓、もしくは花魁のようなもの)がいた。庚信と天官は愛し合っていたが、庚信の家族の反対にあい、そして庚信の新羅を守るという大望のために天官と別れた。天官は悲しみのあまり尼になって100日目に息を引き取った。
寺での一件以来雪華が気になった庚信。そして雪華が「自分は天官の生まれ変わり。彼女は自分の身分が低かったので恋が成就しなかったと思っていた。だから生まれ変わって公主になった。自分を抱きしめて欲しい」と告白する。庚信は我知らず雪華のそばを立ち去る。
庚信への思いを成就させられなかった雪華は、新羅のために他国の後宮に入ることを決める。船出の日、庚信は遠くの崖の上から雪華を見送った。その後雪華を乗せた船は嵐に遭い、雪華は命を落とす。神様に救い上げられて転生をすすめられるが、庚信が転生する人ではなく、天界からの使いの者だと聞き、彼に会えないのなら転生しても仕方ないと拒む。そして舞を認められて風精になったと。請われて舞を舞ってきたけれど、それももうおしまいにして無に返してもらうことを神様にお願いしたことを李氏に話す雪華。

そして自分の身の上話を終えた雪華の後ろには昔のままの若い庚信が立っていた。「抱きしめさせてほしい。地上で多くの血を流したので身を清めるために時間がかかった。やっとあなたを迎えにくることが出来た」と雪華にいう庚信。そのあと二人は李氏が二回もお茶を入れ替えるほど抱きしめあっていた。

金連花さんの他の本を読んだときに、巻末にこのシリーズモノが紹介してあって、試しに買ってみたら面白くて即全巻購入した。(今では手元にないものもあるけれど)私の記憶では茶店の主である李氏の過去についての話が出てこなかったような気がする。

当時はチャイニーズファンタジーかと思っていたが、韓国の新羅時代の話だったのかと後から気づいた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年4月14日
読了日 : 2007年3月30日
本棚登録日 : 2014年4月4日

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