青森県では三世代、70年以上続いている大衆食堂を百年食堂と呼びます。
この物語はそんな百年食堂を舞台にした優しくてあったかな人間ドラマの物語でした。
森沢さんはこの物語を創るために実際の百年食堂を取材したときのエピソードがこのドラマの元になっているみたいです。
生れつき右足の指がなくてとろくさいからとろ森と呼ばれた大森賢治。
彼が露天の蕎麦屋を始めて乾物の行商をするトヨという娘と知り合って「トヨちゃんは俺が幸せにする」
奥手な賢治がやっとの思いでトヨを口説いて二人で初代大森食堂を出店する第一章。
第一章はそんな賢治のエピソード間に(四代目にあたる)大森陽一のお話が挟まれるという形で展開されます。
故郷を遠く離れた東京で大学を卒業しながらピエロのバイトで明日の見えない毎日を送っていた陽一。
そんなある日、バイト先でカメラマンのアシスタントをする七海と出会います。
二人は同じ高校の先輩と後輩と判ってお互いに惹かれていきます。
第二章からは陽一と七海のドラマが中心となっていきます。
「僕はいつまでピエロのまんまなんだろう」
食堂を継ぎたいそんなほのかな夢がありながら風船のお兄さん、ピエロを続ける陽一。
師匠に認められてカメラマンへの夢を駆け上がっていく七海。
五年振りに実家に帰った陽一は高校の卒業文集を見つけます。
作文のタイトルは「夢は日本一の食堂」 食堂を継ぐことが自分の夢だったってことをあらためて心に深く刻みこむ。
ちょっとうるっとさせられて心がほこっとするなかなかいい物語でした。
でもなんか読み終わって惜しい!って思う気持ちもけっこう残ってたりして・・・
『百年食堂』ってタイトルなんで陽一と七海の恋の話しばっかりじゃなくて破天荒な二代目とか食堂そのものの歴史の重みを感じさせてくれたらもっとよかったかなっとも思いました。
文章も読みやすいんだけどなんか特徴がなくて平凡な感じでしたね。
でもまぁ割と好みではあったかな。
「男女が二人でいるときに、頭の上さ花びらが乗ると思いが叶うんだって」明治時代、トヨが賢治に言った言葉
「男女が二人でいるときにね、どっちかの頭に花びらが乗ったら、その二人は幸せに結ばれるっていう噂」七海が陽一に言った言葉。
百年の時を超えてトヨと七海の言葉が重なる。ベタだけどこういうのって好きです。
桜の花びらが散る様子が浮かんでくるようです。
- 感想投稿日 : 2010年6月5日
- 読了日 : 2010年6月2日
- 本棚登録日 : 2010年6月2日
みんなの感想をみる