東京日記 他六篇 (岩波文庫 緑 127-2)

著者 :
  • 岩波書店 (1992年7月16日発売)
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感想 : 46
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収録されている「南山寿」を読んでいて
ああ、おんなじだぁと思ったわ

「ときめくことはある?」

まず「南山の寿(南山のじゅ)」という四字熟語の意味をネットで調べた
「詩経 小雅,天保」にある語で、終南山がいつまでも崩れないように、事業が永遠である意から、 人の長寿を祝う言葉。(大辞林 第三版より)
だそう
「終南山」というのは実際に中国にあって漢詩に多くうたわれるとある
韓国にも南山という山があるらしいし、日本の名古屋にも南山という地名がある
(蛇足)

この「南山寿」という百けんの短編は

「最早世間に用のない身体である」という退官したばかりの元先生が
雨のひどい吹き降りの家の中で
「じっと座っていて何を考えると云う取りとめもない」生活をしているのだが

妻には先立たれるわ、後任の先生にはおちょくられるし
職探しをしてもうまくいかずでもやもやとしている様子が
百けん独特のぞわっとするような調子でたらたらと続くのである

戦前の作だから主人公は50歳代だ、今の65歳くらいにあたるのか
70歳代かもしれない

昔も今もおんなじだ(ということを発見した)

この主人公は恩給があってさしあたりの生活に困らないけれども
何か張り合いのあることがないか、どうかと、もがきにもがくのである

ま、結末はあっと驚く(笑っちゃう)のではあるが

やっぱり特異なうまい作家

しかし、長寿って寿(ことぶき)かねえ
先日104歳の姑を見舞って、つくづく思ったわ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2013年
感想投稿日 : 2020年6月16日
読了日 : 2013年6月10日
本棚登録日 : 2020年6月16日

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