女性同士の飛び降り心中事件。その事件を小説として描いた作家。その小説が舞台化される、というところから物語は動き始める。
なぜ一緒に暮らしていた二人の女性は橋の上から飛び降りたのか。二人の間に何があったのか、あるいは、何が起こらなかったのか。
そして、作家はその事件になぜそれほど惹かれるのか。何が作家の中に生まれ、そして生き続けているのか。
二つの時間は舞台の上で、重なりそしてまた別々に流れていく。ぞわりとした手触りを残して。
灰は、黒の上では白く見え、白の上では黒く見える。見る者によって、そしてそれが見える場所によって変わっていく。
作家が「物語る」その始まりの物語。
二人の女性は三度死ぬ。共に飛び降りたとき、作家によって小説という形になったとき、舞台の上で演じられた時。
そして思う。そこに「顔」はあったのだろうか。
二人の女性と、それを描いた作家に、顔は。その瞬間に、顔は。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2021年3月
- 感想投稿日 : 2021年3月6日
- 読了日 : 2021年3月6日
- 本棚登録日 : 2021年3月6日
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