彼方の友へ

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本棚登録 : 817
レビュー : 160
著者 :
べあべあべあさん 2017年11月   読み終わった 

素晴らしかった、とにかく素晴らしくて素晴らしくてしばらくは言葉にならなかったです。
溢れる涙をぬぐいもせず、ひたすら読みました。
読み終わった後、この涙の意味はなんだろう、と考えてました。悲しいとかうれしいとか感動したとか悔しいとか。そういう「ことば」を全て超えた、これは多分、命の涙なんだと、そう思いました。
たとえば、人は本がなくても生きてはいけます。でも、人生に、自分のそばに本があればその人生は何倍も何十倍も豊かになります。言葉を読み、絵を眺めるだけでなく、それを手に取り胸に抱きその世界に浸る時間、その全てが私たちの命の源となるのですね。あぁ、生きるって素晴らしい。

有賀主筆は私の祖父より少し年上で、波津子は祖母より少し年下。つまりこれは私の祖父母が懸命に生き抜いた時代の物語でした。
美しいものにうっとりとする乙女たち。雑誌の小さなイラストを切り抜き丁寧に紙に貼り自分だけのノートを作る。その時間と心の豊かさ。
父親の外套をほどいて娘たちのコートを作る。カーテンをリボンにし、毛布をスカートにする。そういう生活の(今とはちがう)豊かさ。
言葉を丁寧に話すこと。気に入らない上司であってもウイットに富んだニックネームに様をつけて呼ぶ品の良さ。
そんな豊かで美しい時代が、戦争という狂気によって踏みにじられていく。悲しい。悲しくて苦しくて悔しくて。
美しいものを美しいと言えること、好きなものを好きだと言えること、そんな当たり前の幸せを私たちはもう少し大切にしなければならないのでは。
もう二度とこんな哀しい思いをする乙女を生まないために考えなければならないのでは。
有賀主筆の孤高の信念、純司様の優しさと美意識、波津子の泥臭いけれど地に足着いた豊かさ、そんなたくさんの宝を私たちは守っていかねばならぬのですね。
この世に生きる全ての友へ、私も一冊の本を届けて生きたい。元乙女として、いや、今も心に乙女を抱いて生きる一人の書店員として。
あぁ、もどかしい。この想いをどう伝えればいいのか。うまい言葉が浮かびませんワ。
ただ、一言言えるのは、この物語は宝です。この世界の光となり人を導く宝デス。

レビュー投稿日
2017年11月23日
読了日
2017年11月23日
本棚登録日
2017年11月23日
9
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