
『この世には幸福の特権がないように、不幸の特権もないの。悲劇もなければ、天才もいません。
あなたの確信と夢の根拠は全部不合理なんです』
76歳になった本多は転生の神秘にとりつかれ
ジン・ジャンの生まれ変わりを賭け、安永透を養子に迎える。彼は美しい容姿と並外れた知能を持っていたが…
最初からテンポよく非常に面白いと思って読んでいたが、
透の冷酷さが過激化してくるにつれて不快な気持ちになった。清顕や勲の冷静さ冷酷さとは違い、
自分は選ばれた者と信じ、
自分以外の全てを愛することのない透。
本多は信じていた運命から
大きなしっぺがえしをくらうことになってしまった。
三島由紀夫の当初の『天人五衰』の構想メモとは
まったくかけ離れた結末になった。
この本を三島由紀夫の遺書として読むならば、
本多の老いの苦悩、
透の自尊と絶望、
『あなたは最初から偽物だったのよ』と言い放つ慶子の言葉…
全てが彼自身の彼に向けた言葉にも思えてくる。
考えさせられるシリーズだった。
いまもまだ考えている。
いつかまとめることができたらまたレビューを書き直そう、
とか思っているくらいです。
- レビュー投稿日
- 2013年3月2日
- 読了日
- 2013年3月2日
- 本棚登録日
- 2013年3月2日
『豊饒の海 第四巻 天人五衰 (てんにんごすい) (新潮文庫)』のレビューへのコメント
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