文學界 (2020年6月号)

  • 文藝春秋 (2020年5月7日発売)
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本棚登録 : 22
感想 : 4
4

○石原燃「赤い砂を蹴る」
「でも、あの人はあの人なりに、ユリのことのかわいがってたのよ。」
「しょうがないよ。子どもには親を嫌う権利があるんだから。」

小学生の頃に弟が死に、最近母親が癌で死んでしまった千夏と、夫と義母が死んだ芽衣子。2人はそれぞれに異なる「家族」の中で生きてきた。
そんな2人が芽衣子の故郷であるブラジルの共同体ヤマに戻ることで物語は進む。
故郷に戻った先では芽衣子の辛い過去に千夏のそれも重なっていく。出来事は違えど抱いた感情には似通ったものがあるのではないか。そう感じさせる物語だがしかし、千夏は母親に自身の苦しみを重ねる芽衣子を拒否したりもする。
物語中盤、ヤマで芽衣子の兄弟が亡くなり、そのことで物語は更に2人を結び付けることへと繋がる。そして物語は千夏の母の死のシーンに戻るが、このシーンは圧巻。静かで、しかし画家であり自由に生きた千夏の母親の力強さを感じさせる。そしてまた、親子というものがどういうものかを考えさせられた。
13歳で両親が離婚し、様々な場所を転々としていた自身の母親に対しての「嫌い」という端的な感情。それが段々と変容せざるを得ない環境に差し掛かってきていることを感じる。親子とは何か、改めて考えたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年6月18日
読了日 : 2020年6月18日
本棚登録日 : 2020年6月18日

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