宇宙からいかにヒトは生まれたか (新潮選書)

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  • 新潮社 (2016年2月26日発売)
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感想 : 21
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約270ページで、宇宙の誕生からヒト(ホモ・サピエンス)がこの地上に存在するまでの歴史を語ってくれている。コンパクトだけど、濃密であり、かつ“特異な視点”での語りもあり大変面白かった。
(「地球史学」という過ぎ去ったことだけど、人類がその叡智を使って少しづつ解明していくという分野はロマンを感じる。そこには研究者の解釈の幅が効かせられる範囲があるから)

では面白かった点をもう少し具体的に語ろう。
ひとつは①科学者のものの見方が、われわれ一般人とは違うところを感じながら読めたこと、
その代表的なところは、世の中にある現象を「徹底した分類」によって整理して、理論立てていこうとする姿勢。 世の中のことの中にはまだ確証が持てないことが埋もれていてる。それを補いながらもその先のこと、その上のレイヤーの創造をしようと考えると、自らが納得し、人にそれを伝えないとならない。そのために、徹底して現象を分類し、整理し、それを理論で補う訓練をしてきているのが科学者の姿勢。感覚的、経験則を重視してここまで生きてきた私とは現象の眺め方が違う。
そして「分類の根拠の追求」。これはうえにあげた理論のもとになるもので、幾多の仮説を立ち上げそれをひとつひとつ、徹底して検証していく姿勢でこちらはもの凄く地道なのを感じる。これらの、研究者や調査のことがこの本に語られているわけではないけれども、専門的なことを、短い言葉で分かりやすく説明している箇所に当たると、逆にその奥深さを感じてしまうものです。
2つ目は②更科先生が何度か使っていた「ヒトはつい、自分の属するグループの方が優れているとら思いがちである」という一般peopleの誤った先入観を感じ取って、指し示す研究者たちの中での常識。
あまり、研究者はこのような言葉を口に出さないように思っていた。(実際にはそう感じていたとしても)
これは更科先生の特徴でもあるようだ。
③これは個人的な楽しさだったけど、「あとがき」の博士論文の審査での質疑のやりとりのシーンとその時の言葉「地球の謎を解くために、生物学でよく使う方法を使ったのです。だから私の研究は地球科学の研究です。」
なんか、科学者という存在をいっきに身近なものにしてくれました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年9月22日
読了日 : 2017年9月22日
本棚登録日 : 2017年9月13日

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