シンプルなラブストーリー仕立てでヒロインたちの負けん気が気持ちよい。それなのに、常に損得を計算しながら動く登場人物たちの動機がどこからきているか考えると、当時の中国社会の婚姻システムの辛さがじっとりと伝わってきて、ほろ苦な短篇集だった。昔は女の人は選択肢がなくてほんと大変だったのだなとわかる。そのあたりはどこの国も一緒で。
「傾城の恋」:映画にしたらとてもきれいな画になりそうなラブストーリー。ヒロインはへこたれない人だからよかったけれど、当時の社会の「男に騙された女は死」の価値観とか、なまじっか名家のお嬢さんに生まれつくと自活の手段がなにもないとか、状況はひたすら息苦しい。
あの二人は将来何かあったら絶対相手のこと許さなそうな雰囲気で、そこはくたびれた... そんな安らげない関係ってどうなのって思ったけれど、そんな風にして結婚する以外にヒロインには道がないのだ。ひどい。
「封鎖」:路面電車で恋に落ちる!ないけどすてきね!と思ったのに、男の言い分が陳腐すぎて情けない。でもそういうしょうもない恋の引き金になる、男女それぞれのフラストレーションがずばっとあらわにされているところが肝なのかな。
この人を好きになれば人生打開できる、だから恋に落ちる、というのは実際ありそう。男の言い分だけじゃないや、女の口実も陳腐ですね。社会が、生き延びるために他者を踏み台にしなくていい場所になってほしいな、と思ったことでした。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
中国 - 物語/小説
- 感想投稿日 : 2019年1月17日
- 読了日 : 2019年1月17日
- 本棚登録日 : 2019年1月17日
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