坂口安吾 [ちくま日本文学009]

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本棚登録 : 331
レビュー : 43
著者 :
なつめさん 日本 - 小説/物語   読み終わった 

これが初めての安吾。いつまでも7歳の心を大事にしていた人なんだなと思った。そのときそのときの自分の心の揺らぎを見なかったことにできないというのはなかなかハードなことだろうけれど(身近な人を振り回さざるを得ないだろうしね)、こういう人がある程度いないと世界が息苦しい。いてくれてよかった。以下よかったもの。

「風博士」、「村のひと騒ぎ」。可笑しいんだけど、読み終わってみるとお祭りの後のようになにか物悲しい。「まあお話なんですけれど、本当にこういうのがあったらうれしいような気がしませんか」、って言われている気がする。

自伝的な「石の思い」、「風と光と二十の私と」。子供時代のかなしみと潔癖。出来が悪くて教室にいたくなくて、自分の部屋で固まっていたころを思い出した。どうしてあんなに身の置き所がなかったかって、子供って自分のことをまだ引き受けられないんだよね。保護される身って辛い。ただ息をしているしかなくて。

「桜の森の満開の下」。破滅的な美に魅入られる山賊の話。満開の桜を見上げたときの圧倒される感じ、リミッターを超えてしまいそうな感覚は、お花見をしたことがある人ならだれでも知っているわけだけれど、それをこういう風に魅力的な忌まわしさと絡めて描くなんて、やられたー、という気持ち。最後山賊は消滅してしまうわけだけれど、そういう後戻りできない禍々しい磁力にやれらて落ちるって、実際自分が吸い取られてしまうような体験なんだろう。

レビュー投稿日
2012年4月27日
読了日
2012年4月27日
本棚登録日
2012年4月27日
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