ヴィレット(下) (白水Uブックス)

  • 白水社 (2019年8月10日発売)
3.67
  • (2)
  • (3)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 80
感想 : 5
5

手持ちの駒でなんとか生きていこうとするヒロインの、だからこその認知の歪みや性急さ、痛みから回復しようとする一人ぼっちの格闘が、悲しいような愛しいようなでぐんぐん読んでしまった。少女漫画雑誌の来月号の、お気に入りの連載を待つような気持ちといったらわかるだろうか。

最終的にあのようにルーシーは回想できたのであって、それなら彼女はやりとげたのだからよいのだ。あとで失われたとしても確かに存在したものが、その後の数十年を支えたということ。ただしルーシーは信頼できない語り手だから、あの後結婚して子どもが生まれちゃったりしているかもしれない。

ルーシーの相手は自分だったらちょっと願い下げな人物だけれど、彼女がいちばん彼女らしくふるまえたのはあの人に対してだったのでしかたなし。でもなんであの口調なのか... 新訳で読んだらイメージが変わりそう、というか変わってほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 英米 - 小説/物語
感想投稿日 : 2020年1月11日
読了日 : 2020年1月8日
本棚登録日 : 2020年1月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする