専門性の高い仕事をどうやってシステム化するかということにおいて暗黙知の形式知化というのは大きなテーマだ。もともとプロフェッショナルサービスの生産財としての情報を提供するシステムについての開発マネジメントを研究テーマとしていたことが背景としてあり、先日紹介してもらったので読んでみたのがマイケルポランニーの暗黙知の次元だった。

読んでみると、いや難解!(汗)150ページくらいだからさらっと読めるだろ、と夏休みの読書の1冊でほかにも3冊くらい読めると思っていたんだけど、実際に夏休みに読めたのは上野千鶴子著「情報生産者になる」とこの本の2冊だけ。

「私たちは言葉にできることより多くのことを知ることができる」といういわゆる暗黙知の事実が議論の起点になっている。1章で暗黙知の基本的な構造について対象を知ることと方法を知ることから現象的、意味的な考察として論じているのだけど、いったん読んでノートに話の構造を書き出してみないともうついていけない・・・。なんでこんな言葉使いで訳されているのだろうと思うくらい無駄に難解な言葉で書かれている印象を受けた。認識論とか認知心理のような考え方の理解としてはとても参考になった。へぇ、と思ったことをいくつかまとめておこうと思う。

「あけすけな明瞭性は複雑な事物の認識を台無しにしかねない」

これは、シンプルに本質に迫ろうとしたらそぎ落としてはいけない部分まで捨てられてしまいかねないという意図だと理解できる。暗黙知を形式知化する過程で必要なところまで落としてはいけないよ、という注意だけど確かに暗黙知として形式知化したときの価値を考えるとなるほどと思える。

「全ての研究は問題からはじめなければならない。見えないものが見えること、見ると信じることを暗に認識している。これが事実なら問題が妥当なものになる」

これは、上野千鶴子著「情報生産者になる」にもあった研究の実行可能性の検討と同じようなことを言っていると思う。確かに暗黙知としてそこに存在はしているけど、認識されていないものや見過ごされているものにスポットライトを当てるということが、研究で明らかにするということなのだと考えたらもっともな話だ。そうか、見えないものが見えると信じることを暗に認識している、というのはものすごい観念論だけど、確かに研究者としての個性はそこにあるんだろうなと思う。

文章自体の構成は難解だけどしっかりしているのに、自分の語彙力のなさからなのかなんか読みづらさ満点だったな、と感じてしまった。国語が得意な人にレクチャしてもらいたい。時間がたったらまた読んでみようと思う。ノートで復習して読んだらもう少しすんなり分かるかな。

2023年10月9日

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読書状況 読み終わった [2023年10月9日]
カテゴリ 研究

帯の「6G時代の国際ビジネスに必須な基礎知識!」に惹かれて買ってしまった。ちょっとセキュリティ知識を高めるのには役不足な感じがするけど、セキュリティだけでなく国際機関で仕事をするというのがどういうことかというのも知ることができて、雑学の読み物としては有意義だった。

情報に対し一昔前はリスクというといかに内部情報が漏れないことだったと思う。それが、この本を読むともうそんな平和な時代ではなく、盗まれる時代というか要するに奪い合いと隠し合いの競争社会になっているんだなぁ、と考えさせられる。なんかもう007の世界線。その中で日本の立ち位置を客観的にインターポールでの職務経験から分かりやすく説明して下さっている。中高生が読んでも良さそうに感じた。単にセキュリティ技術的な問題だけでなく政治的にどういう立場を取っていくか、国際機関の中での仕事がどんなものかというところまで垣間見える話は興味深い。

よく総務省がらみで情報通信産業に身を置き仕事をする方は、チャイナリスクが話題に出たりすることがよくあると思うが、どう問題なのかを理解するのに適した書である。将来ネットワーク技術をレクチャーする時にセキュリティーのトピックは外せないと思っているが、こういう話題は面白そうだなと感じる。筆者が指摘されているように日本はデジタル敗戦と言われて遅れをとっているので多少なりとも私も情報通信産業に20年以上キャリアをももつ身として貢献できるようにセキュリティ課題についても今後自分なりの見解を明確にしていきたいと思った。

2023年10月9日

読書状況 読み終わった [2023年10月9日]
カテゴリ 工学

個人的に注目するサイエンティストの一人、成田悠輔氏の庶民向け本という感じ。
息子がタイトルをみるなり、こういうことを書く人は薄っぺらい奴だと吐き捨てるように言ったが、いろいろとデータから考察しているので深い内容なのだよと説明したところでひろゆき氏並みの論破力でつっこまれるのでおとなしくしておくことにした。確かにばっさりとAbstractのポイントだけを残せば、政治と経済の結びつきを自動アルゴリズム化してしまおう、という感じになる。確かにばっさりと斜め読みしようと思えば読めてしまう。しかし、いろいろと経過をたどるとデータに基づく意思決定には変に人を関与させない方がいい点ではなるほど、と思える。これは安全性を高めるシステムの開発の議論でよく言われる手順書よりもシステムで強制的に危険な状況を回避する考え方と似た感じがする。うーん・・・。ただ政治家がネコになるくらいだったら、政治家なんて職種は淘汰されたらいいのにと思ってしまう。

本当に淘汰されるだけの存在に人間はなるのか、というとちょっと違うのかもしれない。人間であるが故の非合理性、アノマリー、情動が及ぼす「悪徳」な部分が荒廃と破壊が想像の第一歩として価値ある存在になるのかもしれない。新しいルールメイキングは、アルゴリズムによって生まれる、だから人間の力で考える価値あることは、どうやってかき乱す(擾乱を与える)かなのかな?と漠然と思った。うーん、合理的に楽な方向を目指した結果、より一層めんどくさそうな世界に突入している感じがする(笑)。

2023年9月18日

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読書状況 読み終わった [2023年9月18日]

GWに買ったけど、結局読み終えたのは夏休み。そして感想を書くのは今に至る。なんか時間がたってしまった・・・。どこかで研究の方法や知的創造の方法について話や講義ができる機会をもったらどういう構成にしようかと考えている中で、夏休みの読書したい本の1冊に入れていたのがきっかけ。たまたま他からも紹介としてあがった本だったのであらためて読んで思ったことをまとめておこう。

上野千鶴子氏の本で研究の作法を学ぶのにとてもよい本だと感じた。過去に遥洋子著「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」を読んだときに「このおばさん、こわぁ」と失礼ながら思ってしまったのだが、あらためてこの本を読んだら生粋の研究者なんだな、と思う。

工学部の学生にどれだけ役に立つかは分からないけど、少なくとも研究して論文を出すということはこういうことなのだよ、と伝えるには十分な内容。大学4年生が修士課程や博士課程で行う研究計画書や研究の進め方について示唆に富む内容だと思う。個人的に目からうろこだったのは、質的研究に比べて量的研究はコスパが悪い、という表現をしていたくだりだ。通常、経営系の博士課程などでは査読付論文にするまでに質的研究は時間がかかるから敬遠されがちがだ。論文にできるデータが取れる&結果からきちんと期待する考察としてまとまるのか、という実行可能性(の見通し?)から敬遠されがちになる。

修士から取り組んで博士号を取得することを視野にあらかじめ入れている場合は質的研究のアプローチもある得る話だと思うが、定量実証の方が論文になったときにも評価しやすい。学位取得においては定量実証でテーマを絞って書き上げてしまう方が効率的だと私自身は思っていた。質的研究は学位をとってからやりましょう、なんてことをおっしゃる先生もいたほど。

でも、生粋の社会学者は質的研究の方が新しい発見が多く実りある研究がしやすい、仮説検証型の研究が多い定量実証は、新しい知見を得る観点ではコスパが悪いという説明をしていた。確かに事実発見で勝負するならそうかもな。今はビッグデータといわれて久しいけれど、質的研究が私の修了した筑波の博士課程の2015年ごろの研究計画ではやりだした感があった。スモールデータをどう駆使するかも面白いテーマだよね、とは思うもののその当時でもはやり修了してからでないと期限に間に合わないよなぁ、と漠然と思っていた。

今となっては自分が質的研究の方法を不勉強だからそう感じてしまったのであって、本当はやってみたらどうだったんだろう?と思う。せっかく学位取得して自由気ままな身(?)となったのだから質的研究も大いに勉強してトライしてみようと思う。

2023年9月18日

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読書状況 読み終わった [2023年9月18日]

GWの読書でAmazonが5冊買うと割引だったことと、何かの紹介で見てひっかかっていたのでちょっと読んでみようかと思いポチっと購入して読んでみた。

感染症の医者でもウィルスのことは案外精通していないということは驚きの事実だった。そして
そのウィルスに詳しい専門家が農学部/獣医畜産学科の領域だというのは言われてみると、あぁそうか!となるのだけど今まで全く気づかかなった。獣医師資格なんてペットのお医者さんでしょ、という感じで獣医さんが(いや、正確には獣医畜産学の分野が、ですね)ウィルスのエキスパートだなんて思いもしなかったのである。

コロナの過剰な意識について社会的問題は確かに筆者の話の通りで、もう少し要領よくやる方法があるのではないかとも思う。ただ、私のような「知らない素人」は家族やかかったリスクを考えるとどうしても保守的な反応をしてしまう。筆者の説明によると、ウィルスが一定数まで増殖しないと発症して健康上の悪影響を顕在化させないのだそうだ。そしてウィルスと細菌の違いについても初めて知った。最近は微量でも問題を起こすようだ。この特徴から手洗い、うがいを徹底してウィルスの量を100分の1に減らせるのであれば問題はまず発生しないというのが筆者の主張だ。問題は、なぜこのことが公にならないのかである。

政府が都合のいいようにエビデンスを重視したりしなかったりしてしまう点は、コロナ対策だけではないと思う。少子化も同様なことが起こっていて不都合な事実をもみ消されているのかもしれない。科学や技術のリテラシーを本質的な意味で持たないとなぁと改めて思わせてくれた。

筆者の関西人的な感覚もなかなか興味深い。イグノーベル賞を狙う気質!?(笑)のようなおもしろい話や命に係わる科学だからこその倫理観を求められる話もある。メディアになかなか出てこない著者ではあるが興味深く拝読した。

比較的ページ数も多すぎず、読みやすかったし新たな教養を学べた感じがしてよかったな。

2023年6月19日

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読書状況 読み終わった [2023年6月19日]
カテゴリ 研究

私が2005年ごろにこんな研究したいな~と思っていたことを見事に具現化されたような内容。

自分が定量分析、実証研究の方法を実務家教員として教えるときにいいテキストになるものがないかと思って購入した本。大当たりだった。これから実証研究の方法を学ぶ観点でとてもよい書籍だと思う。13章はワークシートにできそう。トピックもとても私にとって興味深い内容だった。

特に9章以降が私には超おもしろかった。イノベーションの源泉や、促進要因はどこにあるのかについて考えさせてくれる内容が豊富に論じられている。スターサイエンティスト(実際に5章を読んでいただければ定義が分かる)の話は、未来に希望を感じる内容だった。素敵な考察ですねぇ~。やっぱり天才ってやさしんだなぁ、と。後継者育てようとしたり、貢献しようという意識が高くて。他にもインセンティブやサイエンティストの嗜好性とキャリア選択の話など興味深い話が目白押し。1か所12章の図表12-17で「プロトタイプの完成」から「VCから投資を受ける」のパスを図は「-」負の影響としているけど、これって「+」正の影響なんじゃないかな。VCにとってのリスクを下げる結果、VCからの投資は増える、という説明だと思うんだけど。

統計のバイアスについても触れていたが、統計的に扱うこと自体の課題についても注意する必要があると学ばせてもらえた。ベンチャーキャピタルの重要性についてスティーブン・カプランの論文を議論する章(9章)があるのだけど(この論文のタイトルがとってもファンキー(笑))、このリサーチクエスチョンが「投資は、人を見るべきか、ビジネスアイデアを見るべきか」

学者の論文から出た現状の答えは、「ビジネスアイデアを見る」方が勝るらしい。そして本文にも、実務家からは「人を見るべき」という見解が多そうで、この結果に違和感があるだろう、外的妥当性の検証を積み重ねることが必要だという内容の指摘がある。はい、その通りだと思います。この結果に対する私の考察は以下の通り。

統計的に情報を扱える、すなわちある程度の量があるデータが入手できた上での分析から導かれている答えであって、そもそも良いビジネスアイデアがそうそう簡単に出てくるものでもないという視点が抜けているのではないかと考える。そりゃよいアイデア(誰が売っても売れるようなアイデア)が出てくれば、それが統計的にはよしとする答えが出やすいだろう。属人性に近くなるほど、ベストプラクティスを導出するのに複雑さや成果が出るまでの階層性が存在するはずだから。そうなってしまうと、定量分析の限界で質的研究を登場させるしかないかもしれない。人間は、なんとなくその複雑さや階層性の重要性を肌感覚で理解しているから違和感があるのではないかと思う。このあたりが人にはできてAIにはできない話にもつながるのかもしれない。

2023年7月16日

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読書状況 読み終わった [2023年7月16日]
カテゴリ 経営戦略論

ゴールデンウイークに本屋で新刊のコーナーを見ていたらちょっと難しそうかもしれないが読んでみようと思って購入。これが意外と分かりやすくて秀逸な内容だった。意思決定科学、心理学、行動経済学のよい教科書としての一面と実践的なビジネス書としての一面を併せ持つ内容に感じた。全体の話がきちんと構造化されていてさすが大学の先生はまとめ方うまいよねぇと思わせてしまう、そんな本。

キチンと図を使って概念枠組みを示している。当初のプランAが実行できなくなる不適応状態について様々な角度から環境要因やその他様々な要因を分析している。プランAを実行できなくなる、ここまではよいが(まぁ柔軟性が組織に不足という意味ではよくないのか?)プランBを発動できなくなるというこちらの分析が秀逸。舵を切ることができずに過去の成功体験、トップマネジメントの場の雰囲気が原因になる話は、山本七平の「空気の研究」に通じるなぁとおもったら筆者も「空気の研究」をあげてきた。おぉ、なるほどそうだよねぇ、と納得。ここで私が秀逸だと思ったのは分析をしたうえでプランBを発動促進する施策を提言しているところだ。

悪魔の代弁者、仕組みづくり、AIにできないSomething(詳細はこの本を読んでもらいたいが)の中から自分にやれることを組織の中でやっていこうと思った。もはや出世することもないだろうということで気楽な身分だろうし(笑)。

2023年6月18日

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読書状況 読み終わった [2023年6月18日]

インターネット技術の有名人、MITメディアラボの所長だった伊藤穰一氏の新刊である。今は千葉工大の先生らしいが、活躍した先生方が日本で教鞭をとられるとはありがたやぁ、という気になる。

内容は、これからの時代のキーテクノロジー3つ、Web3(特にDAO)、NFT(Non Figurable Token)、メタバースについて技術の特徴ともに社会影響についての考えを論じている。私にはあまりも新しい用語が飛び交いすぎて理解に時間がかかったが、以前に会社の会議で「お金は情報である」という話をしてもらったことがあるけど、このNFTの話を読んで、なるほど!と思い出すとともに納得した。もう、何が現実で何が仮想世界かすらわからなくなってきてしまうのではないかと思ってしまうような世界観の話。自分の個性、アイデンティティの表現(というよりも他者への見え方、見せ方)が劇的に変わってしまう世の中になるんだなぁ、となんとなく理解できた。

自分自身、通信の世界ではあるが5G(特にローカル5G)という新しいテクノロジーに携わる者として特に共感できるのは、「時代の変化に取り残されないために必要なものは2つ―テクノロジーに対する「リテラシー」とそのテクノロジーによって社会はどう変わるのかという「ビジョン」です。」という序章最後の段落の一文。これは私が最近「共創意識とリテラシー」が重要だと思っていることを、かの伊藤穰一も同様のことを言っていたのか!とちょっと嬉しくなった。

若い時は先端技術を追いかけるのが大好きだったけど、最近は技術の社会影響や関係性に関心が変わってきた。そんな中で未来の技術を追いかける楽しさを思い出させてもらえた。

2023年5月2日

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読書状況 読み終わった [2023年5月2日]

この本を手にしたのは、仕事と家庭でコミュニケーションエラーが発生して、自分の常識が家族の非常識なのか?と問題意識をもったからだ。なんでこれほどに伝わらないのか、なぜこの受け取り方で怒りを買うのか、突如として分からない。話の流れから何をさしているか当たり前のごとく分かるだろう、何バカなことを言っているのか、と言われたり、人の話を全く聞いてないと言われたりしたので、いったいこのコミュニケーションの齟齬は何が原因で起こるのだろうと疑問がずっと残っていた。

実際に読んでみると、心の取扱説明書を読んでいるような感覚になった。話を聞けない、聞かないといったコミュニケーションの問題は、人と向き合ってどう対話するかという問題に直結する。単なるコミュニケーションスキルで片付けられるほど、テクニカルなスキルでもアプリケーションのスキルでもない。きわめてファンダメンタルな、ベーシックなマインドセットだと思う。

人は死ぬ直前まで五感の中で聴覚だけは残るらしい。これは生き抜く最もベーシックな力を心の取扱説明書として捉えているように感じた。著者が言う孤立と孤独の違いは大きく違う。さらに興味深かったのは、「親」という機能の話。親には対象としての親と環境としての親があるという話。親がどんな表情や、態度・反応をしていたかは対象に該当する。服をたたんでおいたり、子供が意識しなくてもインフラ環境を整えてくれるのが親の役割だと筆者は述べている。

仕事の管理職として上司や部下との対話の中で、また父親、夫として家族との対話の中で「聞く」と「聞いてもらう」これら2つの機能不全が自分に起きていると理解できたのは、有意義だった。
人の話を聞くことができるためには、人に話を聞いてもらう必要がある、という筆者の主張は、会話がキャッチボールと言われるように送り手と受け手の両方が機能していてはじめて聞ける、聞いてもらえるようになるということだと理解した。なるほどきわめて本質的な理解が必要だったのだ、とあらためて気づかされた。


心配してもらうことが聞いてもらうスキル、巻き込む力と巻き込まれる力というのが、マネージャー管理職には必要だとなんとなく思ったが、臨床心理でこんな捉え方ができるのかと妙に腹落ちした。

2023年3月2日

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読書状況 読み終わった [2023年3月2日]

自分の認知機能の低下を強く感じたので、読んでみようと思った。この手の本を読むと一度脳ドックをした方がいいのかな、と思ったりしてしまう。最近は特に45を過ぎてから、話していたことを忘れてしまったり、聞いていたことを忘れたり。2、3分話を進めていくうちに最初の方で話をしたいた内容がきちんと把握できていなかったり。その結果、息子に馬鹿にされたり怒りをかったりしてぼこぼこに言われてしまう始末(父、情けない・・・)。

仕事でも管理職になってものすごく把握しておく幅が広くなってしまって、ぜんぜん頭に入ってこない。テレワークの影響で運動不足で記憶力が低下するということも手伝ってか、ぜんぜん自分が冴えている感じがしないし、気持ちがぐちゃぐちゃして晴れやかさが全くない。もしかしたらミドルエイジクライシスなのか?そんな漠然としたストレスを感じつつ、どう自己解決したらいいのか(そもそももうカウンセリングなどを受けるべき段階なのか)と思いを巡らせて、まずは読んでみようと思った。

著者の文体がとても穏やかでわかりやすい説明だ。けっこう築山 節 先生の本は読みやすいと思う。生活習慣の影響を的確に伝えてくれているので、何に注意すればいいかが良く理解できる。適応障害にかかったときにいかに血流をめぐらすことに配慮するかという点で運動をしたりする習慣をもつようにしたのは、この本からもメリットがあると分かった。自分に役立つし、取り入れようと思ったことをあげると以下

・家事こそ脳トレ積極的に雑用をしよう
・意識して目を動かす(私の場合は、積極的に散歩していろいろな景色、動物を見る)
・何の役に立つかよりも誰の役に立つかを重視して考える
・活動をマルチにして楽しむことが大事
・案ずるより書くがやすし(まとめ作業をしながら考える)
・失敗ノートを書いて分析する

一部実践していたけど私の場合は特に、失敗ノートは業務日誌的によくやっていて自分の仕事の教科書ともいえる存在になっている。やはり効果があるのだと納得した。今の仕事は確かに新しいものを作って入るのだが、自分がプロとして創造的に仕事ができるのかというと何か違和感があるし、自分の強みを発揮する創造的な仕事ではない気がして、得意でないがこなせることを会社のニーズにあわせて淡々とやっている状況。ここから、ポジティブで明るい希望をもった気持ちで、冴えた脳で創造的な活動を再びやっていきたいと思った。

脳と気持ちの整理術の中で興味深く参考に会ったのは、いかに脳に変化という刺激を与えるかと、締め切りにまずはアウトプットを出すことが重要だということだ。難しい仕事には助走が必要でなんらかの雑用など行動して成果としてすぐに見えやすい作業をやりつつやっていくとよいといった話も、なるほどと感じる。ちょっとおっくうになり気味な最近の状況を打破する知恵を得られたと思う。チャレンジしてみよっと。

2023年3月2日

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読書状況 読み終わった [2023年3月2日]

とて読みやすい。著者は農学部の教授である。文章の表現から筆者がきっと学生にとって優しい先生なのではないかと感じさせられる(激しい思い込みかもしれないですね、すいません)。難解な漢語も言い回しもせず、ゼミで話をしているかのような文体なので、自分のゼミを懐かしく思い出してしまった。個性というものが自然と現れる人になろう!と思わせてくれるそんな本だ。個性とは?、ふつうとは?、区別とは?、多様性とは?といったなんとなく分かった気になっている言葉だけど、これらをあらためて深く考えさせてくれる。ぜひ就職活動をしている学生さんにお勧めしたい。大学のゼミの後輩の方々にもオススメである。

この本を読むきっかけは、息子が塾で私立中学入試の国語で出題されたおすすめの本として紹介されていたものだったのだけど、大人が読んでも十分考えさせられるし、楽しめる。しかし最近の小学生はとても良質な論説文を読んでいるのだなぁと感心させられる。本を読むのは大事だけど、それだけの頭でっかちにならずにチャレンジする行動力や非認知能力もぜひ鍛えて、個性を大切にする素敵な大人に成長してほしいと思う。

2021年8月15日

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読書状況 読み終わった [2021年8月15日]

久々に長編の本を読んだ。クリステンセンの「イノベーションの最終解」以来だな。

こんなイノベーティブな実業家がいたのかと驚かされる本だった。年代的には渋沢栄一の子供くらいの世代だろうか。マーケティングの授業でセグメンテーションの切り口として年齢、性別、所得レベル、地域、人口などの項目を教わるのだけど、自己流で歴史人口学に着目して次々と新規事業を連鎖的に考えて日本の生活インフラを変えてしまった人だ。

小林一三は、新規事業家のようなクリエイティブなイノベーターには普通の生い立ちではとてもなれないのかも・・・、と思えるような複雑でドラマのような家庭環境で育つ。ただし、彼のように最初に銀行へ就職し、計数感覚を身に着けてその後実業家に転職して次々と事業を起こす。人口変化に注目して市場の利害関係者をあっという間に把握する洞察力とビジョナリー精神、先見性を磨く。こんなキャリアを歩めば、少しは近づけるのかもしれない。

今は産業構造の変化もあわせて考えることになるので複雑だし、当時のような人口が増加する段階ではない。少子高齢化社会を踏まえた補正が必要だ。それでも、このキャリアは少しは私のような凡人にも参考になりそうだ。

産官の連携が叫ばれる中で、相容れない摩擦もあるのだろう。この問題も垣間見えるトピックがある。いくつかの企業(阪急電鉄、宝塚、第一ホテルなど)の取締役社長の後に国政まで経験している。キャリアに幅というよりも奥行きがある人を初めて見た気がする。なお、ひ孫がテニスプレーヤーの松岡修造氏だから多様性に満ちた華麗なる一族って感じだ。

やれDXだの、AIだ、IoTだ、5Gだと新規技術に沸き立って異業種連携のお祭り騒ぎの現代を彼が見たらどう思うのだろう。彼の思考回路を学びまねてみるもよし、この思考回路を自己流にアレンジするもよし。技術&社会をどう設計&実装するか、よくよく考えてみたい。

2023年5月2日

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読書状況 読み終わった [2023年5月2日]

読んだきっかけは息子がトライしている中学入試で塾が紹介したからだった。著者は神経内科が専門で高次機能障害学を研究しているらしい。私は「高次機能障害」にちょっと興味を持っていた。自分が1年前に適応障害にかかり、3か月くらいで治ったように思える部分と何か脳の一部に問題があるのではないかと感じたことがあった。なんとなく認知能力や記憶力の低下を年のせいにしていた。半分あってるかもしれないけど。

息子と会話がかみあわず、お互いにイライラしていることが多かった。単なる息子の反抗期にも思えたのだが、それだけとは言えなさそうだ。会社の仕事で重要なことを記憶違いしてしまったり、記憶が欠落したかのようになってしまうことがあって、ショックを受けたこともあったからだ。このとき理由を調べてみると、うつ病や適応障害との関連で脳の認知機能障害や高次機能障害の話が出てきたため、関心を持つようになった。普通は高次機能障害というと脳卒中になったり、脳に事故などで損傷を受けた人がなりやすい病気らしい。でも脳の血流という捉え方をすれば、メンタルの問題でも同様のことが起きてもおかしくないと思う。

ひとえに記憶力がなくなったといっても、短期記憶と長期記憶のどちらも記憶力かでも原因は異なるし、全体的な関係性の記憶と具体的な直近の記憶なのかなどで記憶に結びつけて「分かる」といっても様々だ。それを理解しやすく説明してくれているのは、ありがたい!

心像(メンタルイメージ)は、普段聞きなれない言葉だから慣れるのに時間がかかったが、わかるということにおいて区別できる、特に言葉で違いを明確化できることは一つの重要な要素だと改めて思った。筆者が説明する知覚心像と記憶心像をふまえて読み進めると、人が語感をどうやって身に着けていくのかが理解できる。知覚と記憶のリンクで考えていくと、なるほどなあと思った。

サイエンスの領域で「分かる」ことに対して「分類整理」、明らかにするものに対して分かっていることとわかっていないことの「識別」、「モデル」思考という概念が重視して取り組まれる理由がこの本を読んでいくと納得がいく。

いろんな意味でなるほどねぇ、と「分かる」体験をさせてくれる本だった。

2023年5月2日

読書状況 読み終わった [2023年5月2日]

この本でためになったのは、LSE LowSelf Esteem という概念だ。自分も感じたことがあるが、友人にもけっこういたりする。

たぶんこの回復に必要なのは、ありのままの自分を受認することなんだろな。

2016年9月3日

読書状況 読み終わった [2016年9月3日]

非常に勉強になった。きちんとデータで議論する重要性はこれからの時代の常識になると思う
。子供をもつ親、小中学校の先生にぜひ読んでほしい一冊

2015年8月23日

読書状況 読み終わった [2015年8月23日]

良い理論ほど実践的だ、とはよく言われるが使いこなせるだけの読解力が要求される。 使いこなすためには、自分のもつ事例で研究しなくてはならない。これらが私の率直な感想だ。幸いクリステンセン教授の扱ったメインの事例が情報通信業界なので、とても有意義だった。 新しい技術潮流で格好の事例を見つけたので、研究してみたいと思う。

経営学理論の教科書としては最高だと思う。論旨の構造が洗練されていて、変化のシグナル、競争のバトル、戦略的選択、環境要因を含めた影響分析の有機的な関係性の論じ方は、やはりハーバードがトップレベルの大学なんだなぁと感じさせる。ちょっと難解すぎたり、アメリカに偏っている感も否めないので、4つとしておこう。

2020年8月2日

読書状況 読み終わった [2020年8月2日]
カテゴリ 研究

イクメン、イクボスとかいろいろ言われる世の中になったので、読んでみた。部下育成との類似点について述べるあたりは、非常に共感できるものがある。

エンジニア流子育て論なんてのも、考えてみると面白いかな、と感じた。

2014年6月19日

読書状況 読み終わった [2014年6月19日]

言わずと知れた著名人

日本人が当たり前と思っていることが、世界トップランクの競争力をもつ。そこに気づけるかなんだろう

2014年5月11日

読書状況 読み終わった [2014年5月11日]

私の筑波GSSM修士課程で一緒だった仲間が執筆に関わり、拝読させて頂いた。編著者の境先生らしい感じの印象。境先生の本の特徴を例えて言うなら、深く味をデザインした職人の一品料理ではなく、気軽につまむアラカルト料理という印象を私は持っている。ピンポイントな主張をメインストリームに据えて、厚みのある章立てではないので、議論が発散して見える。これは、私の理解能力が不足しているだけだろうが。ただ、実務家のリファレンスブックとしては、素晴らしい価値ある本だと思う。プロデューサーの資質に関わる言及や、組織学習をインプリする部分、私の研究対象の技術サービスには、新たな視点を与えてくれる本だった。

今度、彼らに会って話をするのが楽しみだ。飲み会でも企画しようかな。

2013年12月7日

読書状況 読み終わった [2013年12月7日]
カテゴリ 研究

7年前に読んだ本が、たまたま本棚から落ちて、改めて読んだ。専門性のスキルや実績の証明を投稿論文という形で残し、履歴書に書こうというのは、共感できる。海外のコンサルタントなどの専門家は、実務家でありながら学位を持っている人も多い。個の力が重要な昨今、けっこうユニークなキャリアアップ方法かも。

2013年11月25日

読書状況 読み終わった [2013年11月25日]
カテゴリ 研究

とても実践的で分かりやすかった。集客と回収のポイントをうまくデザインする、なんてあたりの話は極めて基本的で当たり前だが、なるほどなぁ、と思わせてくれる。実務家が軽くビジネス企画を学ぶのには、良い本だと思う。筆者の関わった事業領域の特徴をもう少し客観的に書いてくれたら、活用しやすいと感じた。

2013年12月4日

読書状況 読み終わった [2013年12月4日]

情報システム関連の研究MIS Quarterlyのジャーナルにある論文(KahnのPSP/IQモデルなど)をわかりやすく説明してくれている。情報のビジネスにおいては、情報そのものを売りにする場合、製品の側面と、情報提供というサービスの側面がある。これを品質管理の視点で説明してくれている。

身近な事例でも、振り込め詐欺は情報品質としてどう評価されるかなんてのは、なかなかおもしろい。

2013年10月27日

読書状況 読み終わった [2013年10月27日]
カテゴリ 経営情報

ソフトウェアの場合は要求工学があるが、要求工学の中でも「要求の発見(Discaovery)」に相当するようだ。エスノグラフィーの研究アプローチで質的データをもとに要求を見つけ出そうというもの。この研方法は、現場で起こっている事象の記述力と概念化させる部分だけでなく、概念化を用いたときの事象の再現性がポイントになると考えている。

どちらかというと再現性という視点は工学の発想かな。

2013年10月27日

読書状況 読み終わった [2013年10月27日]
カテゴリ 質的アプローチ
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