大手拓次詩集 (岩波文庫 緑 133-1)

著者 :
制作 : 原子朗 
  • 岩波書店 (1991年11月18日発売)
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本棚登録 : 177
感想 : 20
4

病の苦しみは生きていくことの苦しみである
生きようとして必死にあがくから苦しい
そのことに気づいて甘やかな死の魅力に目覚め
取りつかれた病弱な幼子は
しかし、それによって生きる力をも得ることとなった
死のイメージ…タナトスの存在を思うとき
彼ははっきりと愛欲を感じたのだ
しかしそのことは、彼にさらなる現世の苦しみをもたらす
なんとなれば
妄想の中の恋人を絶対化するあまり、彼は他者に対して
きわめてラジカルな
批評的な態度をとらざるをえないだろうから
個人的には、象徴詩人としての大手拓次を
僕はあまり評価しないのだけど
しかしこの「大手拓次詩集」はむしろ
ひとりの詩人が、恋に生きようとして敗れ
妄想の薔薇園に去っていくまでの
きわめて赤裸々な、精神史として、非常に面白く読めるものである

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感想投稿日 : 2016年7月18日
本棚登録日 : 2016年7月18日

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