清兵衛と瓢箪・小僧の神様 (集英社文庫)

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「菜の花と小娘」
小川に流れる菜の花と、その脇に歩く娘の、小さな旅の物語
解説には「母と子の原初的な関係さえしのばせる」としてあり
その果ての「仕合わせ」の世界こそ
志賀直哉はじめ、有島武郎、武者小路実篤ら「白樺派」の
理想の頂点と言えるのではないか、と
僕などにはそう思えるのだった

「網走まで」
汽車のなかで母子づれと乗り合わせになる話
母は子供のわがままに振り回されっぱなしで
語り手は
「この子にいつか殺されずにいまい」
などと空想をめぐらせる

「荒絹」
恋の女神が嫉妬の女神に転ずる話
ギリシャ神話に想を得ている

「母の死と新しい母」
母の死後、数ヶ月たらずでやってきた新しい母に
すっかり夢中になってしまう「私」は
じつは母を愛していたのではなく
観念的な理想としての「母」を愛していたのだ
…というのは、厳しすぎる見方であろうか

「正義派」
電車の人身事故を目撃した三人組が
正義感にまかせて「炎上」する話
しかし、誰の心にも悪はあるのであって
口から出た正義は、即、おのれにも向けられることになるのだ

「清兵衛と瓢箪」
大人たちには子供の才能を見抜けなかったという物語であるが
一般的に言って、理解できないものに投資するのは
余裕のある家庭だけだということを
作者がどこまで意識していたかという疑念は残る

「范の犯罪」
たとえ自分の行為であっても
その基になっているのが不確かな精神である以上
一貫したストーリーによって説明できないこともある

「城の崎にて」
死の恐怖を踏破した作者の追憶
おそらくは、芥川龍之介の自殺にも影響を与えたのではないか

「赤西蠣太」
時代小説
マジメがとりえの不器用侍が
じつは仙台藩をあざむく間諜だったという

「十一月三日午後の事」
死にかかった鴨を買い、風呂敷に包んで帰る途中
熱中症で死にかかってる兵隊たちのわきを通りかかったもので
なんだか食欲が失せてしまう

「小僧の神様」
小僧へのほどこしが
みずからのおごりたかぶった心をうきぼりにするようで
イヤな気分になるという話
そうなると、小僧の純粋な感謝の心が、逆につらいものである

「焚火」
滞在する赤城山中にて、夜中に焚火をするという
ただそれだけの「筋のない小説」
芥川が絶賛した
仲間とすごす楽しい時間に、作者の素朴な死生観が見え隠れする

「真鶴」
「脱線して崖を転げ落ちた列車の中から、初恋の女が生還する」
そんな光景を夢想する少年の話
志賀直哉の小説には、重要なモチーフとして
汽車道・電車道、そういったものがしばしば登場する

レビュー投稿日
2014年1月11日
本棚登録日
2014年1月11日
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