青の時代 (新潮文庫)

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唯物論と観念論は並立して存在する一方
けして交わることのないものである
で、あるがゆえに
人間は、物質的な不足のなかにありつつも
幸福を感じることが可能なのだ

…戦争の時代を経てなお、経済的に裕福な実家を持つ川崎誠は
そんな呑気なことを考えながら
しかし唯物論者きどりの女の気をひくために
父からゆずりうけた財産を増やそうと
投資に手を出した
そして詐欺師にひっかかり、大損ぶっこいたのだった
その時の悔しさが、彼自身にも詐欺師の道を歩ませた
宗教家でも社会主義者でもない彼にとって
所詮、物質的幸福と観念的幸福は切り離せないものだった
にもかかわらずそれでいて、彼は高いプライドの持ち主だった
正論家ゆえに傲慢な、父親への反発があったため
川崎誠は、あまのじゃくで依怙地な性格に育っていた
しかしその臆病さと狡猾さに助けられ
常に本音は隠し、周囲を欺いていた
…というよりは、自分自身すら欺いていたのかもしれない
つまり憎むべき父親のありようこそ
実は川崎誠にとっての理想我であるということに
彼自身気づいていなかった
だから川崎誠は詐欺師にも、ましてやくざにもなりきれない
いやそれはむしろ
父親のように社会から認められたい
その一心で始まる子供の火遊びにすぎなかった

光クラブ事件をモデルにした作品ということで知られているが
実際のそれとはかなり乖離しているようだ
三島にはありがちなことで
これも主人公の心理描写がくだくだしく、非常に読みにくい小説である

レビュー投稿日
2018年4月7日
本棚登録日
2018年4月7日
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再読情報 [1回]

  • 2018年4月8日

    太宰治の「人間失格」から遅れること二年だが
    ほぼ同時代の作品であることはもう少し意識されてもよいだろう

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