桜の実の熟する時 (新潮文庫)

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blockさん  未設定  未設定

「岸本捨吉」三部作のうち、二番目に発表されたもの
作中の時系列では、一作目「春」の前日談にあたる
フランス逃亡中に執筆された

バルザックもスタンダールもまだ日本では紹介されてなかった頃…と思う
若き岸本捨吉はこの時代、ディズレーリのような政治家に憧れていた
ジュリアン・ソレルやラスティニャックが目指したように
ディズレーリもまた、未亡人に取り入って出世した
それを真似しようとして、つまづいたらしい
といっても別に、人妻あいてに不貞を働こうとしたわけではなく
五つほど年上の女と少し親しくした程度のことだ
ところが岸本捨吉は、自意識過剰な男だった
二人の関係が、人の噂にのぼることすら耐え切れなかった
当時流行の、キリスト教に忠実であろうとする彼にしてみれば
それはあくまで清い交際でなければならなかったし
また、木曽の山奥から上京してきた田舎者としては
人の目が気になりすぎるところもあっただろう
そのわりに、人目を忍ぶことができないほど不器用な男でもあった

とにかくそんな風にして、一度は夢破れた岸本捨吉
しばらく後、学校を卒業した彼は
恩人の期待に背く形で教師になるのだが
そこでまた生徒への恋愛感情をもてあましたあげく
教職を放り出して旅に出てしまう
なにかあったら逃亡するのは
「破戒」から「新生」まで一貫したパターンとなっている
岸本捨吉(島崎藤村)はここまで、自らを童貞だったと断言しているが
実際のとこはどうだったかわからない
いずれにせよ、急に旅立つ展開の脈絡のなさは
どうにも不自然で、後年の読者からいろいろな憶測も出てきたようだ

レビュー投稿日
2018年8月3日
本棚登録日
2018年8月3日
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再読情報 [1回]

  • 2018年8月3日

    旅立つ前に童貞を捧げていったようにも読めるのだが
    なにしろ具体的な描写がいっさい無いのだ

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