完全な遊戯 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2003年8月28日発売)
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「完全な遊戯」
いかれた女の、帰る場所がないのをいいことに
好き放題やらかす男たち
生きる力なき者の末路といやあそれまでだが
いや、それももちろん大問題だが
しかし人権尊重を建前とした戦後にも相変わらず
むしろ陰険さを増した暴力が幅をきかせている
この恐怖こそ彼女をおかしくしたものの正体ではないのか

「若い獣」
ボクシング小説
アンラッキーも実力、で済まされてしまう敗北者の余生

「乾いた花」
ギャンブルの快楽に飽き足らず、薬物の快楽に誘われゆく女
快楽の前で、ストイシズムは嘲りを受ける

「鱶女」
十七歳の少年が抱く憧れと恐れが、海の妖怪譚に重なる

「ファンキー・ジャンプ」
ヘロインとジャズピアノがもたらす陶酔のうちに
過去の女と家族の記憶が錯綜する
それはまさしく享楽
彼は奪う者であり、奪われる者でもあった

「狂った果実」
弟のストイックさに対する嘲笑と、それに裏腹な憧れ、嫉妬
かつて仲のよかった兄弟が狂ってゆく
たとえばこれを、中河与一の「天の夕顔」に比してみたとき
敗戦体験が与えた衝撃の深さをうかがうことができよう

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感想投稿日 : 2016年9月22日
本棚登録日 : 2016年9月22日

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