「ふるさとは遠きにありて思ふもの」というフレーズが有名である
室生犀星は、北村透谷や島崎藤村らの自然主義というか
恋愛至上主義を受け継いだ詩人・小説家で
若い頃は東京と、郷里の金沢をいったりきたりして暮らしていた
初期作品では身の置きどころのない悲しさや
女と縁薄い悲しさを書いていたが
萩原朔太郎との出会いから東京の文壇とかかわるようになって
そのうち大御所のひとりになった
ところが日本の敗戦を経て、長い沈黙期に入る
作品を読む限りではどうも、戦後の女性解放に絶望したらしい
というのはやはり
北村透谷以来の恋愛を聖化する思想が
自由主義によって否定されてしまったと感じたからではないだろうか
昭和30年代から執筆活動を再開した犀星は
金魚ちゃんに恋したり、伊勢海老になってしまったりするのだが
それはおそらく、川端康成のいう「魔界」にも通じた境地であろう
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- 感想投稿日 : 2019年11月9日
- 本棚登録日 : 2019年11月9日
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