おぅねぇすてぃ (新潮文庫)

  • 新潮社 (2010年4月26日発売)
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本棚登録 : 138
感想 : 13
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主人公が全然格好よくない。自分の下で働いてくれる人のことも、想いを寄せてくれた遊女のことも、真摯な言葉をくれた宣教師のことも、彼の心の奥には届かない。英語を学ぼうという彼に途をつけてくれた先達者の奇禍にも何ひとつしようとはしなかった。
この格好の悪さが、多くの日本人の、今も昔も変わらない平均的な姿であると、自分を省みて安心してしまった。こんなでも、極東の僻地島国日本は千年以上も存在し続けている。世界が驚く清潔さと安全、最も歓迎される旅行者、日本男性の人気が低くても、日本女性は大人気である。
文明開化時代のこの本では自然である、カタカナで書かれる英語が日本人の外国語に対する弱点を露呈していて面白い。カタカナとローマ字による表記を廃するまで、日本人の外国語修得は茨の道だろう。読者や作者がカタカナ表記に違和感を感じ始めたら、少しは進化が始まるかも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2012年5月7日
読了日 : 2012年5月7日
本棚登録日 : 2012年5月7日

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