初めて読んだ西尾維新の本。
これがデビュー作ということですが、ここそこに散りばめられた古典からの引用などを読むと、本当に20歳で書いたの?!と驚き。
特筆すべきは登場人物の際立った「キャラクター」ですね。こういう文芸のジャンル(ライトノベルとか。)には疎い私ですが、一読して思うのはやはり、キャラクターの「ベシャリ」でぐいぐい読ませる筆力でしょうか。
情景の描写(リアリティ)、言葉の象徴性(シンボリシティ)、行間を読者に想像させるような寓意性(イマジネーション)。
そういった”表現の奥行き感”をすっとばして描かれたストーリーは、いわば小説よりも落語などの「語り」に近い印象を受けました。
それがライトな感覚であるかどうかは評価する読み手次第ですが、ともかく私は「美味しい読み物」として読みました。
ミステリとしてどうかと問われれば、クビキリという題目からしてあまり新しいものではないでしょう。けれども、それはゼロ年代以降のミステリ、いやミステリのみならず文芸のあらゆるジャンルで起きている「ネタ切れ」の結果でもあるでしょう。
ネタ切れの先にあるもの。つまり今、材料は出揃っていて、それをどう料理して「美味しいかどうか」が問われる時代だと思います。
古典を引くことが特権的なことでなくなり、また巨大なアーカイブとしての図書たちが誰にでも開かれ、おびただしい本が出版され読まれるこの時代、キャッチーでポップでキッチュな小説を誰もが求めていると思うし、少なくとも私は文字を追う快楽に圧されてべろべろです。
本を読み終えるまで半日の間、存分に味わえるエンタメ。そういう本を送り出してくれた作者に、ただただ感謝。2017年のいま、そしてこれから、甘い蜜を吸い放題の時代に産まれてきたことに、ただただ感謝。
- 感想投稿日 : 2017年4月3日
- 読了日 : 2017年4月1日
- 本棚登録日 : 2017年3月25日
みんなの感想をみる