パロール・ジュレと紙屑の都

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本棚登録 : 494
レビュー : 48
著者 :
bluei127さん  未設定  未設定

ユーモラスな語り口ではじまった物語は思いもかけないさみしさ、やるせなさを伴って幕を閉じる。
触れられそうな親しみがあったはずのストーリーが「離別」以前のことが明かされる(解凍される)とともにひんやりとした手触りの、壁を隔てたものに変わっていくよう。
一瞬の言葉が凍結し結晶化されるうつくしさ、義眼の中にかつて恋したひとのジュレをしまいこんでいたレン、その義眼に魅せられてロイドとともにジュレの神秘を守っていた写真家。タトイをはじめとした解凍士たち、レストランのコックなど、キャラクターの造形がとても印象的。
綿密に構築された世界は寒色の中にきらきらしさを内包していて、ついつい立ち止まっては一文を何度も眺めてしまう。
紙魚になれないわたしたちは何者に変貌することもできず、自分という視界で分厚いクッションを挟んだ状態で物語と向かい合うことになる。それでも、物語の中を存分に泳ぎ回るような素晴らしい時間を過ごすことができました。
優しいけれどどこか厳かな、何度も読み返したくなる小説。

レビュー投稿日
2016年10月12日
本棚登録日
2016年10月12日
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