蔦重の教え

著者 :
  • 飛鳥新社 (2013年2月1日発売)
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本棚登録 : 283
感想 : 43
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分類すれば本書は、いわゆるタイムスリップものの時代小説、ということになるのだろう。
しかし、読了してみての印象は、自己啓発本とかビジネス書といった類がしっくりくる。

現代でいうところの名プロデューサーだった蔦屋重三郎。書店を開き、洒落本などの販売や出版を手掛けた。浮世絵にいち早く目をつけ、歌麿を売り出した人物として知られている。
実は謎の多い東洲斎写楽の仕掛け人でもあった、という話が最近取り沙汰され、本書内でもそれをにおわせる展開が綴られているが、これは決着がついたのか?などと、島田荘司の『写楽 閉じた国の幻』も思い出しつつ読んだ。(こっちも早く続編が読みたい!いつなんだ、島田さん!)

時代物といっても語り口は軽妙で読みやすく、そこそこ厚い本だが一気に読める。そもそもタイムスリップものだし、眉唾っぽいエピソードも随所にあり、荒唐無稽と言ってしまえばそれまでだが、単にエンタテイメントとしての楽しさだけでなく、重三郎の敏腕ぶり働きぶりは、社会人の心得としても十分に通用する。ちょっと考えれば当たり前のことかもしれないが、つい忘れがちな心構えを改めて気づかされた。
ご丁寧に、巻末に「蔦重の教え」が掲載ページつきでリストアップされてもいるじゃないか!
最後のひと仕掛けもすごくいい。とても楽しい読書体験であった。

ぜひ、新社会人のみなさんに読んでほしい本書である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説以外(エッセイ・ノンフィクションなど)
感想投稿日 : 2014年5月10日
読了日 : 2014年5月6日
本棚登録日 : 2014年2月5日

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