- 「好き」を一生の「強み」に変える育て方 勉強も仕事も「楽しがる力」がこれからの究極のスキル!
- 落合ひろみ
- サンマーク出版 / 2025年3月13日発売
- 本 / 本
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250417*読了
推しである落合陽一さんと、落合さんのお母様の共著の子育て本。わたしが子育てに関して、最も読みたかった内容がそこにあった。
自身が落合さんの研究し続ける生き方、姿勢に憧れていて、自分もそうなっていきたいし、息子にもそんな生き方をしてほしいと思っている。
どうすれば落合さんのようになれるのか、と度々思っていた。
その答えがこの本にはつまっていた。
落合さんもお母様もお父様もとても優秀で、大前提として恵まれた環境にいるのは事実。
遺伝子からして違うのも事実。
なので、何を読んでも、それってもともとの才能や環境がいい面もあったからでは?と思ってしまうのは事実。
なのだけれど、金銭的にも遺伝子的にも落合家ほどではなくても、子育ての仕方、子どもの意思を尊重すること、やりたいことをやらせてみること、母親が働きづめでも限られた時間で子どもに愛情を伝えることなどは、その子の人生を豊かにすることにつながると思った。
親に言われるままや、何も考えずになんとなくではなく、自分のやりたいこと、研究したいことを探し、それに向かって夢中になる力が育めるのではないか。
それはお金をかければいいということではないはず。
SAPIXなどの超進学塾に入れて難関校を目指すのはやはりお金がかかるので、だれでもというわけにはいかないのだけれど。
難しい面を見るより、この子育て本から自分にできることを実践していく。それが息子にとってのより良い未来につながればいいなと願いつつ。
2025年4月17日
- 花屋さんが言うことには (一般書 382)
- 山本幸久
- ポプラ社 / 2022年3月16日発売
- 本 / 本
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250414*読了
終始あたたかな気持ちを抱きながら読んだ。
奈良に住んでよりいっそうお花が好きになり、じぶんでチューリップを育てる経験を経て、もっとお花を育てたい気持ちが増した。
そんな折にこの小説を読み、お花屋さんへの憧れやお花をアレンジし飾ることへの興味が湧いた。
お花屋さんの仕事というとアレンジメントの部分にフォーカスがあたりがちで憧れる部分だけれど、その実、裏方作業、力仕事が多くて、水を扱うから冬は特に堪えるだろうし、大変なことが多い仕事だと気づかされた。
それでも主人公の紀久子をはじめとして、鯨沼の地で愛されている河原崎花店で働く人たちやお客さんの人柄もふくめて、いいなぁと思う。
この小説をきっかけとして、仕事帰りにお花屋さんに寄って、びびっときた花をアレンジしてもらい、家に飾っているし、ホームセンターで花の種を買って、息子と植えた。苗ではなく種から育てるのは難しいらしいのだけれど、それでも種からやってみたいという好奇心。
さらに植物学、造園、環境デザインにも興味が湧いている。
小説で教わったことでもあるのだけれど、何歳になってもチャレンジする気持ちを忘れずにいたい。
2025年4月14日
- 2045不都合な未来予測48 生成AIが開けた扉の向こう側
- 友村晋
- 日経BP / 2024年11月8日発売
- 本 / 本
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250408*読了
いまから20年後あたりまでにどんな変化が起こるのか、どう予測されているのかを知っておきたく、一気読みした。
あくまでも予測ではあるので、必ずこの通りになるとは限らないのだけれど、多少偏った見方をされているとはいえ、一次情報にあたることをモットーとされているだけあり、説得力があった。
遠い未来ほどそうなる確率は下がっていくものだけれど、直近5年間の予測はおそらくそうなるのだろうなと思える内容ばかり。
未来のことはわからないけれど、先々に自分が解雇されたり、賃金が低くなったり、生きづらくなったりするのは避けたい。それは誰しもが思うことで、そうなる前に備えておくのは大事。
今いる環境は恵まれていると思うのだけれど、だからといって安穏とはしていられないし、うまくAIと付き合っていかねばなと思う。
前著『2030 未来のビジネススキル』と絡めてあって、この未来予測に対してはこのスキルが必要、とまとめられているのもわかりやすかった。
今すぐやるべきこと、として各当事者となり得る人に向けて行動を促しているのもいい。
2025年4月8日
- Web3とDAO 誰もが主役になれる「新しい経済」
- 亀井聡彦
- かんき出版 / 2022年7月6日発売
- 本 / 本
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250404*読了
DAOについての知識を深めたかったので手に取った本。web3は2022年に盛り上がっていたので、以降はあまり書籍が出ていないのと、初歩的な内容の本が多く、書籍で深掘りづらいのが残念。
この本も2022年に出ていて、当時の事例をいくつも知れたのはよかった。
web3もDAOもまだまだ発展途上で、これから何年もかけて育っていき、いつか世の中で当たり前になるイノベーションであるのは間違いなく、初期からかかわれているのは嬉しい。
こういうのは自分で使ってみないと会得できないものでもあるので、知識を入れたら実践あるのみ。
2025年4月4日
- 一歩目からのブロックチェーンとWeb3サービス入門 体験しながら学ぶ暗号資産、DeFi、NFT、DAO、メタバース
- 松村雄太
- マイナビ出版 / 2023年6月29日発売
- 本 / 本
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250404*読了
WEB3関連に興味があり、職場で借りた本。
初歩の実践に適した本でキャプチャをたくさん載せてくれているので、これを見ながらメタマスクの開設やNFTの発行などをするとよいかと。
STEPNはブームを過ぎてから始めたけれど、Move to earnの楽しさを感じている。
2025年4月4日
- 冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法
- 安斎勇樹
- テオリア / 2025年1月26日発売
- 本 / 本
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250402*読了
シゴデキな同僚に貸してもらって、通勤電車で日々読んでいた本。
課長職をしているので、マネジメントと現場レベルで組織づくりについて書かれている部分が特に刺さった。
ワンピースに例えるのはそこまで好きじゃないのだけれど(ビジネス本で例えられすぎている感があるので)、今っぽい組織にしていくには対話が必要であるのは間違いないし、自己実現と組織の成長を絡めるのも大切だと思う。
ビジネス本は読んで納得して終わりではもったいなく、学んだことを実践してなんぼなのだけれど、なかなかどうして難しい。
せめて、メンバーに対して自己実現と弊事業部の発展や望む未来をリンクさせられるように、面談では意識して話をしている。
口だけ番長にならないようにせねばなと自戒。
2025年4月2日
250324*読了
江國さんのうつくしいことばたちにひたる幸福を噛み締める。
この小説からなにを受け取ったか。
それはすべらかな小石のような、とっておき。
小学生も、大人も、鳥も、老人も。
だれものなんてことのない日々、本人にとってはそれぞれが重要でかけがえのない時間でありながら、本人にとっても特別ではないとき。
そのすばらしさ、愛おしさを思う。
わたしにとってもそうで、当たり前のように思える毎日がどれだけ慈しみ深いものか、いつも江國さんの小説に教えていただく。
人生のその年齢ならではの思考を江國さんはなめらかに、健やかに描かれる。なんとも見事だと思う。
川はどこにでもある。生まれ育った街にも、今住んでる街にも。馴染み深い川。
当然のようにそこにある景色から離れたとき、わたしは思い出す。何度でも。その川を、渡る自分を。
2025年3月24日
- ピエタ (ポプラ文庫)
- 大島真寿美
- ポプラ社 / 2015年1月2日発売
- 本 / 本
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250321*読了
ヴィヴァルディといえば四季。
その華やかな、煌びやかで優雅な音楽を思い出す。
ピエタはヴェネツィアにある孤児を養育する慈善院。
ヴィヴァルディが演奏家として、合奏・合唱の娘を指導してきた。その教え子であるエミーリアの視点で描かれる、ヴィヴァルディの死後の物語。
ヴィヴァルディとかかわった人々の行く末、と書いてしまうのはあっけない。
特に女性、エミーリアはもちろん、アンナ・マリーア、ヴェロニカ、クラウディア…、女性の芯の強さと、当時の女性の生き方について感じさせられる小説だった。
女性同士の絆のようなものがそこにはあって、それは美しいメロディーのように流れつづけている。
2025年3月21日
- 読んでばっか (単行本)
- 江國香織
- 筑摩書房 / 2024年6月12日発売
- 本 / 本
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250227*読了
これはすばらしい本だ。そう断言できる。
本の世界で暮らしてきた読者好きのひと、まさしく「読んでばっか」りのひと、すべてに贈りたい。
「ミラクル・クリーク」「オリーヴ・キタリッジの生活」「シェイクスピア&カンパニー書店の美しき日々」を江國さんが読まれていたこと、感想をしたためられていたことがうれしい。
おなじ本を読んでも、抱く感想もその表現の仕方も違っていて、でも似通った印象を得ている部分もあって、それがとても愉しい。
紹介されている本のほとんどは読んだことがないし、この先もすべては読まないと思う。
でも、江國さんが教えてくださったから読みたい本のリストに加えて、いつか読むであろう本がいくつもある。
本を読んでばっかりな江國さんのやわらかでうつくしい文章で語られる本たちがうらやましい。その本を書いた作家さんがうらやましい。江國さんに紹介されたり、解説を書かれたりすることはなんとすばらしいことか。
書評をまとめた本ではあるのだけれど、そしてそこには江國さんの生活が色濃く描かれているわけでもなくて、読んだ本の世界にまさしく江國さんが訪れているように語られているわけなのだけれど、それでもそれは評する意味での書評よりも読書エッセイと呼びたい。
どの本も評するのではなく、ひたすらに愉しむその向き合い方。江國さんだなぁと思う。
とても好きで好きで、長い時間をかけてじっくりと味わった本だった。
2025年2月27日
- ごはんぐるり (文春文庫)
- 西加奈子
- 文藝春秋 / 2016年2月10日発売
- 本 / 本
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250227*読了
西加奈子さんのまっすぐさ、すがすがしさ。偽らなさ。もし、なにか罪悪感のあることをしてしまったとしても、それをどこかで吐き出して反省できるようなそんな気持ちよさ。そしてなによりも強い独自性。
西加奈子さんらしさというものをあらわすと、これらの表現が思い浮かぶし、その「らしさ」がご飯粒のようにぎゅっとつまって、おむすびみたく握られたのが『ごはんぐるり』だと思う。
読んでいて、ほんとうにしあわせな気持ちになれた。幸せな食オンチと表紙裏の説明文に書かれているけれど、食オンチよりも食べることを全力で味わう関西人のなかの関西人(ほめことば)という印象。
どのエッセイもすてきで、読み返してはその料理を想像したい。肉じゃがバター、活字のごはん、ひとり寿司、正解シリーズ(秀逸)、はじめましてのごはん(トルコ・セネガル・ベネズエラ・フィンランド)…ああ、よすぎる。
西さんのことばではないのだけれど、書かれていた「胃袋は思い出でできている」がずっと残ってる。この先もきっと何度もこのことばを思い出すだろう。
食への執着や好きなもののかたよりが強い自分が、食のエッセイを書くとしたらどのたべものをどんなふうに描くだろう。お寿司は欠かせない。なんならもう書いてる。
食べることは幸福。西さんの食への想いをたっぷり受け取って、お腹がいっぱいになるような、お腹がすいてくるような、とにかく食べもののことばかり考えてしまう、そんな本だった。
まとめると、この本めっちゃよかったよ!!!です。
2025年2月27日
- 十二月の十日 (河出文庫)
- ジョージ・ソーンダーズ
- 河出書房新社 / 2023年7月6日発売
- 本 / 本
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250215*読了
義父の読者好きの友人から借りた本シリーズ。
アガサ・クリスティーばかり借りたけれど、二冊だけは別な作家の本を選んだ。
古い本が多い蔵書のなかで、新しそうだったので手に取った。
まず、岸本佐知子さん訳の時点で信頼がおける。
短編集なのだけれど、生活の苦しい、日々を汲々と過ごす人のストーリーが多かった。その救われなさ。
とくに鮮烈だったのは「スパイダーヘッドからの逃走」と「センプリカ・ガール日記」。
前者は犯罪を犯した者が実験台となり、言語中枢が活性化されたり、知らない相手に対して強烈な愛情が芽生えたりする薬を注入される話で、もし自分が実験される身だったら、を想像しては震えあがった。
後者は裕福ではない家庭の父親しるす日記の形式をとっていて、幸運の後に押し寄せる絶望と、奇妙なSGという名の庭飾りが強く印象に残っている。
この短編集につまった一つひとつのストーリーは、読み手に深い爪痕を残す。一度読めば忘れられない光景が脳裏に刻まれる。もっと読みたいと欲するようになる。
アメリカでは2013年に出版されたらしい。10年以上の時を経ても、古さをまったく感じさせず、より一層、この物語たちのうちに秘めた問題は色濃くなっているように思う。
2025年2月16日
- 失われた時を求めて (2) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
- マルセル・プルースト
- 集英社 / 2006年3月17日発売
- 本 / 本
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250211*読了
スワンがオデットと出会い、熱烈な恋をしていた頃の話と、語り手がスワンの娘に恋焦がれていた時期の話。
一冊内で分量が多いのはスワンの恋。
第三者視点、それは語り手の視点なのだけれど、神の視点ではなくてここまで鮮明に他者の恋を語れるって非現実的ではある。語り手は神なのか?
「失われた時を求めて」自体が矛盾を多々はらんできるので(これだけのボリュームを書けば当たり前といえる)もう気になりませんが。
それにしてもスワンのつのる執着心と、オデットのまさしく女心、心境の移り変わりの対比が印象的だった。
個人的には第一篇の三部、「土地の名・名」は短いながらも語り手の若さゆえの恋の様子が好きで、スワンの恋愛よりも読んでいて楽しかった。
ヨーロッパの土地のこと、美術、音楽のことが各所に織り交ぜられているのが味わい深くて、気に入っている。
2025年2月11日
- 雲をつかむ死 新訳版 (ハヤカワ文庫)
- アガサ・クリスティ
- 早川書房 / 2020年6月18日発売
- 本 / 本
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250206*読了
犯人がまさかすぎる人物だった。
今まで読んできたクリスティー氏の小説、6冊のうちで「アクロイド殺し」の次に驚く結果だった。
もしかしてと思わないでもなかったけれど、いやまさかね…と信じきってしまっていて、いかにも善良な読者。
飛行機内で起こった殺人事件。
百年近く前に書かれているから、当時の飛行機の様子は今となかなかに違っていて、飛行機恐怖症からすると怖すぎる。よくこれで無事だったなと思うような代物。
犯人を探すためにイギリスとパリを行き来するポアロ氏。美しい女性、ミス・グレイが物語に彩りを添えている。
この人が犯人?怪しい…いやでも違うのか…?を繰り返してぐるぐるぐるぐる。
見事に混乱させられて、ラストにあっと驚かされて。
私ってなんていい読者なのだろう。
2025年2月6日
- 失われた時を求めて (1) (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
- マルセル・プルースト
- 集英社 / 2006年3月17日発売
- 本 / 本
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250128*読了
長年読みたかった「失われた時を求めて」にようやっと手をつけた。
1巻は東京への往復で一気読み。
こんな小説はなかなか書ける作家さんがいないだろうな…と第一巻にして感じた。
過去の回想から始まり、今巻以降も過去がどんどん現れていくはず。
時系列が分かりづらく、理解に手間取る場面もあった。それすらもこの物語の魅力。
長編好き、複雑難解ないわゆる文学的な小説が好きな自分にとっては大変好み。今年、できれば半年内に全13巻を読破することを目標にする。
印象的なシーンがいくつもあって、それが脳内で情景として浮かんでくる。
解説でも語られているし、きっと書評をする人にとってもここは重要シーンだと思うけれど、紅茶に浸したマドレーヌを起点として、過去がどっと押し寄せてくる、その量と密度!やっぱりここが一番印象的。
あまりにも長編で、この中に含まれているテーマと数多く、研究も多々されている。
これは文学史に残る名著となっているのも当然。
巻末に各篇のあらすじ、全篇を通した登場人物100人(!)の説明があり、この先の長い長いストーリーを把握するのに有用だった。
2025年1月28日
- 謎のクィン氏 (ハヤカワ文庫)
- アガサ・クリスティ
- 早川書房 / 2004年11月18日発売
- 本 / 本
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250127*読了
義父の読書好きの友人から借りたアガサ・クリスティシリーズ4冊目。
ハーリ・クィン氏はいままでに読んできた推理小説の中でも探偵らしさの薄い探偵。
もはや探偵ではない気がする。
謎解きをするのはいつもサタースウェイト氏。
でも、ひらめきのきっかけを与えるのはクィン氏で、なにもかも見透かしているような気になってしまう。
神出鬼没のクィン氏、彼が現れるところに事件あり。しかも、恋人や夫婦、浮気相手など恋愛絡みの事件ばかり。
ハーリクィンとは道化師のことで、かといって滑稽な振る舞いをするわけでもなく、ただそこにいて、飄々と的確な意見をくれる。
こんな探偵もいてもいい。
2025年1月27日
- キャクストン私設図書館 (創元推理文庫)
- ジョン・コナリー
- 東京創元社 / 2024年10月18日発売
- 本 / 本
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250123*読了
キャクストン私設図書館&書物保管庫にわたしも住みたい。本好き、読書好きであればおなじように思う人ばかりだろう。
誰に会いたいだろう。悩ましい。
たしかにホームズには会ってみたいかもしれない。
洋書限定なのだろうか。
今思いついたのは、若草物語の四姉妹や赤毛のアンに会ってみたい。
物語の登場人物とともに暮らせる、それだけでわくわくとし、うらやましさに身をよじり、幸福になれた、そんな2作。
「失われたものたちの本」とつながっている、「虚ろな王」もまたダーク。
さらにグロテスクでダークなのが「裂かれた地図書」。解説で知ったのだけど、著者のジョン・コナリーさんは一筋縄ではいかない、理解するのがむずかしいような物語を書く作家さんとのこと。
たしかにこれは複雑怪奇、つながりがあるのか、バラバラなのかもよくわからない、ただ恐怖ではあって、読後感もすっきりしない。
だからいいのだ、という評にも納得。
読みやすい物語がいい小説とは限らない。
読者を悩ませたりうならせたりできる作家さんこそ、腕のある人物だと言える。
実は12編とエッセイ1編が原書にはふくまれていて、本にまつわる4編だけをまとめたのが本書。そんなん全部読みたいやん。
しかも作品集の2作目にはいっているという。であれば、1作目から原書で読みたいんだが?
と、原書を買いそうになっている。
すべて訳した本が出るのが先か、わたしが原書に手を出すのが先か…。
2025年1月23日
- おしどり探偵 (ハヤカワ文庫)
- アガサ・クリスティ
- 早川書房 / 2004年4月16日発売
- 本 / 本
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250119*読了
借りているクリスティー氏の小説、3冊目。
タイトルのとおり、仲の良い夫婦が今回の名探偵。連作短編小説になっている。
ポアロ氏、マープル女史よりも、わたしはトミーとタペンスのベレズフォード夫妻の推理劇が好き。
若くエネルギッシュな2人のやりとりがおもしろいし、勇猛果敢な妻、タペンスが活躍する場面にすかっとする。
殺人事件から、アリバイを解き明かしたり、失踪事件の謎を解いたり、はたまた命を狙われたり、どこかコミカルでテンポよく物語が進んでいく。
今作のもうひとつ特筆すべき点として、トミーとタペンスが数々の名作推理小説の探偵や助手を真似して、謎解きを試みる点。
おなじくクリスティー氏の手によるポアロを意識した作もあり、各短編のパロディ要素が物語に彩りをそえている。
2025年1月19日
- 失われたものたちの国
- ジョン・コナリー
- 東京創元社 / 2024年6月28日発売
- 本 / 本
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250116*読了
長い旅路から帰還した。セレスとおなじくへとへとである。手に汗にぎる、というよりも、心臓がきゅっとなるほどに恐ろしく、どうか救いを、と願いつづけた物語だった。激しい戦いだけが冒険じゃない。
"あらゆる読者と同じくセレスもまた読み終えたすべての本によって変容し、彼女の人生そのものが読み終えた本の記録になっていたのです。"
本とともに生き、成長してきた自分にとって、そしてすべての本好きにとって、このことばは力強く響くだろう。
著者自身もそうであったように、親として我が子を想う、その他者への愛が胸のうちにあることの幸福と、それゆえのつらさをセレスを通して実感させられた。
すべての物語は読者のこころに蓄積されていくものだけれど、そのなかでも何度も思い出す大切な物語がある。本作はまさしくそれに値する。
幼少期になにかしらの物語を読んだり、読み聞かせてもらった記憶を持っている大人は多いと思う。
特に本が好きな少年少女時代を過ごしそのまま大人になった人にとって、なかでもその後、親になった人にとって、この小説は共感と感動が大きいのではないかな。
もちろんそうでないひとにも、すべてのひとにおすすめはしたい。
前作以上にわたしにとっては意味のある本だった。
2025年1月16日
- 予告殺人 新訳版 (ハヤカワ文庫)
- アガサ・クリスティ
- 早川書房 / 2020年5月26日発売
- 本 / 本
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250113*読了
義父の読書が好きな友人から借りた昭和五十年代発刊のアガサ・クリスティーを読もうシリーズ。
今作はミス・マープルの活躍劇。
古きよき推理ものに詳しくないので、ポアロは知っていてもマープル女史の存在はいままで知らず。
けれど、読むほどにこのイギリスの伝統的な老婦人に好感が高まり、ポアロ氏よりも好きになった。
ポアロ派、マープル派でいうとわたしは後者。マープルシリーズをもっと読みたい。
さまざまな境遇を持った登場人物がたくさん出てきて、誰もが犯人のようにも無実のようにも思え、まったく予想は当たらず。
わたしは推理小説を読んでもなかなか犯人を当てられない。
その街のニュースが書かれている地方新聞で予告されたある婦人を狙ったであろう殺人、命を落としたのは意外な人物。
誰が真実を語っているのか。ひとは見たものをそのまま語るとは限らない。
マープルさんが普段暮らす村での事件ではないので、前からマープルさんを知っている読者には違った場所でも活躍する彼女を楽しめるし、わたしは今作が初のマープルシリーズだったので、今後読む小説で普段のマープルさんを知れるというわけ。
マープルさんは主役の名探偵なわけだけれど、そのわりに登場しない場面も多々あって、それも特徴的。
彼女がいなければ解決されなかった謎ではあって、お見事!なのだけれど、主張しすぎないそのつつましさにも好感が持てた。
ラストで推理を解き明かしていくシーンを映像で見たいと思った。
2025年1月13日
- ヘラクレスの冒険 (ハヤカワ文庫)
- アガサ・クリスティ
- 早川書房 / 2004年9月16日発売
- 本 / 本
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250109*読了
義父の友人(読書好き)から借りたアガサ・クリスティー5冊のうちの1冊。
なんと昭和51年発刊。文字は小さいわ、茶色く変色して古い本の匂いがするわ、の年季もの。
ブクログにあるはずもなく、2004年発売のこちらを登録。訳者さんも違う。
ポアロのクリスチャンネームがヘラクレスであるところから、ヘラクレスの12の物語になぞらえた12個の謎を解いていく短編集。
人探しから、巧妙な殺人、麻薬事件…12の物語に出てくる怪物をいかに別のモチーフと重ね合わせるか、クリスティー氏の発想に膝を打つ。
どれも魅力的だけれど、わたしが気に入っているのは婚約者の娘の熱い愛情に触れた「クレタ島の雄牛」かな。
「失われたものたちの本」の感想にも書いたように、わたしはとってもイギリスびいき。
1920年代にこんなにもウィットに富んだ推理小説を書く才能を秘めたクリスティー氏のことをとても尊敬する。
推理小説の原点ともいえる、この時代にしかも女性で!この偉業を成し遂げたのは、神からのおぼしめしだと思う。
借りているあとの4冊も、むせるような古めかしい本の香りを吸い込みながら読むとする。
2025年1月9日
- 失われたものたちの本
- ジョン・コナリー
- 東京創元社 / 2015年9月30日発売
- 本 / 本
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250108*読了
「失われたものたちの国」を先に買ってしまって、先にこちらを読まねばと、しかも単行本でほしい、としばらく探してようやく手に入れた経緯がある。
ファンタジーはやっぱりイギリス!
イギリスびいきの自分はそう思ってしまう。
デイヴィッドが迷いこんだおとぎ話の世界は、想像以上に凄惨で…。
子ども向けではまるでなかった。大人の自分でも、うっとなってしまう世界が繰り広げられていた。
赤ずきん、白雪姫、ヘンゼルとグレーテルなどなど、たくさんのおとぎ話が作り変えられ、それがまたおそろしい。
デイヴィッドの冒険譚や成長の物語と捉えられるけれど、読者に対し、えぐられるような傷を残された気がする。
目を背けたい世界、でも読まずにはいられない。それがおもしろいということなのかもしれない。
読めてよかった本。
これでようやっと、「失われたものたちの国」が読める。
2025年1月8日
- Mine! 私たちを支配する「所有」のルール
- マイケル・ヘラー
- 早川書房 / 2024年3月21日発売
- 本 / 本
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250108*読了
本好きな義父の友人が義父に貸した本を、義父から借りて読んだ。
(この貸し借りができるのも紙の本である利点で、まさにこの本でも語られていること)
さまざまな所有について深掘りされ、解説されている本で、この本を読むことで身近な所有に目を向けて、「これもまた所有か」と考えるようになった。
たとえばうちの会社はフリーアドレスなので、デスクが決まっていない。にもかかわらず、自分がいつも座るお気に入りの場所があり、そこに別の人が座っていると不快に感じてしまう。
カフェでの席確保や満員電車での座席争いも所有のひとつ。
お金を払って得たダウンロードコンテンツが突然消されてしまっても、削除の権利は提供していた企業側にあるというのも、普段は気にもとめていないことだけれど言われてみれば怖いし困る。
特に私はスマホの写真をGoogleのクラウドで保存していて、半永久的に大量の写真を保持できていると信じていたわけだけれど、これだってGoogle側が操作一つで削除してしまうことができるわけだ。
とはいえ、何万枚もの写真をプリントして置いておくわけにもいかない。
本書では身近な所有に限らず、財産の相続や環境問題についても取り上げているし、今となっては当たり前のように感じるシェアリングエコノミーについても語られている。
この本には記載がないけれど、今だと権利の所有で言えばNFTも主流になりつつある。
所有についての問題、考え方の変化はこの先も起こり続けるだろう。
今まで持ってこなかった視点を与えてくれた、わたしに所有させてくれたという意味でこの本に感謝している。
2025年1月8日
- ホットミルク (新潮クレスト・ブックス)
- デボラ・レヴィ
- 新潮社 / 2022年7月27日発売
- 本 / 本
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250103*読了
国籍をどうこう言いたいわけではなくても、この小説は日本で生まれ育った作家には到底書けないであろうと思う。
最後までなぜこの小説が「ホットミルク」というタイトルなのか、明確な答えを得られずにいた。そのわからなさが、この本自体を貫いている。
母の呪縛を背負う娘というのはよくあるテーマかもしれないけれど、娘が母から解放されるまでの単純なストーリーでもなくて、周辺の人々とのやりとりや関係性が強烈でそちらに気が向いてしまう。
ギリシャ人の血を引きながらギリシャ語は話せず、それなのにパパステルギアディスなんて、この先こんな苗字の登場人物には出会わないだろうと思えるインパクトのある名前を名乗り続ける主人公、ソフィア。
母の病気の治療のために母娘二人でスペインに赴き、これもまた個性的な医者とその娘である臨床技師とかかわりを持つ。
さらにソフィアはイングリッドという女性とも、海の家の男性とも関係を持ち、進路もセクシュアリティも混沌とする。
それだけではなく、父に会うためにギリシャを訪れるし、免許もないのに運転はするし、想像を絶する破天荒さがナチュラルに描かれるところがとても海外っぽい。それがいい。
主題をとりまく周辺が突飛すぎる。
金融危機真っ只中、熱いスペインとギリシャの夏にジリジリと焼かれながら、物語を堪能した。
ソフィアの未来は明るいのだろうか。
最後はぽんっとスペインの海に放り出されたような、これで終わりなの?と心もとなさを感じた。
2025年1月3日
- 馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow (講談社文庫)
- 森博嗣
- 講談社 / 2023年7月14日発売
- 本 / 本
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241231*読了
小川令子と加部谷恵美、2人が探偵コンビとなって謎の解決に挑むXXシリーズ。
解説で斜線堂さんがS&Mシリーズを読むタイミングを見計らいすぎていたように、わたしもいつ読もう、今じゃないとこの本をあたためていた。
そして、やっぱり圧倒的おもしろさに夢中になり、次作を続けて読むことになる。
S&Mシリーズから順を追って、ほぼシリーズすべてを読んできているから、小川令子と加部谷恵美には親しみがあって、彼女たちのことをよく分かっているつもりで読めるのはいいところ。
今作から森博嗣さんを読んでも絶対に夢中になるんだろうけれど、そういった方にも必ず2人それぞれが登場する他シリーズを読んでほしい。もっと楽しくなること請け合いである。
自分はちょうどこの2人のあいだの年齢で、小川令子はお姉さん的存在、加部谷恵美は後輩みたいに思って読んでいる。
ホームレスである柚原典之を調査するにつれ、浮き彫りになっていく事実。
ハラハラする展開があるからおもしろいんじゃない、謎解きそのものがおもしろいんじゃない、それなのにページを繰る手が止まらない。
それこそが森博嗣さんの小説の魅力のひとつ。
ちょうど12月に「ラブセメタリー」でも、ホームレスの男性について調べるために、他のホームレスの人に聞き込みを行うという今作と似たようなシーンがあって重なった。
柚原典之の視点でやっと考え方、生き方についての理解ができたけれどそれは共感できなくて、やるせなくて…。
森博嗣さんが投げかけた問いは、普段考えもしてこなかった現実を、変化球で投げつけられたような感じ。結局、答えは出せないのだけれど。
それでいいのでは?と森博嗣さんなら言うだろうか。
2024年12月31日