落語の入り口 想像と創造のコミュニケーション (Next Creator Book)

  • フィルムアート社 (2017年6月23日発売)
本で見る
2.60
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 45
感想 : 3
3

アマゾンのレビューでは、大変評判の良くない本。最初から最後まで読んだら、そう悪い入門書でもないのだが…。

まず、最初の20ページまでが良くない。落語の聴ける場所や公演情報の情報誌に噛んでいる方々なのか、執筆された方々が、「門外漢は来るな、私達はお前と違うちゃんとした落語ファンだ…」と言った風情で文章を書かれている。ここで、正直、「お前なんか来るなよ」と言われてもくじけなかった読者にだけ、扉を開いている。

これは、各項目の執筆担当者の名が、本文の最後に入るこの本の風体のせいもあって、執筆者名なんか見ないだろうと言い放しなのだろうか?だとしたらひどい話。

その後の、昭和元禄落語心中の作者、雲田はるこさんのインタビューまでちゃんと読めば、導入は悪くないのに。

この本の購買層は、表紙を飾る雲田さんの絵で

「お?」

と思わされたことだろうから。

ただ、読者さんがインタビューだけ読んで本を閉じる事を危惧してか、面白いところでバツンとそのインタビューが切ってある。

私のように本は開けたら最後まで読むのがポリシーの人間は、そのまますらすらと読み進み…。

どこで落語が聞けるのか。

落語の構成と、仕草や寄席のざっとした様子。

最近の落語ブームに乗って、落語界で起きている
新しい演者さんたちの取り組み。

落語を取り巻く、落語ブームの周辺にある
異なる世界のトピック。

人気の落語家さんの紹介。

落語界のざっとした歴史…。

などなど、知ってて助かる入門者が欲しい情報はちゃんと出ている。タームが短いから読むのも楽だし、確かに執筆者がころころ変わるのなんて、内容に集中してたらそんなに気にならないかもしれないが。その後に、また雲田さんのインタビューの後半がいきなり入ってくる。この構成では読みにくいことおびただしい。

この本、執筆者が複数で、それぞれの書き手が新客をこの世界に誘うことに対して、それぞれ熱意の温度差があることが良くない。読んでほしくて書かれたページは、本当に分かりやすくてよかったから、本を閉じて素通りも、実はもったいないのだ。

それと、落語とAIのお話などは、確かにブームの一つの側面だけど、一章を立てなくても入門者には数ページのコラムでよかった。

その分に割いたページを、この本に出てきた落語作品の索引と、内容のかいつまんだ紹介。同じく、落語家さんの索引と、プロフィール。大きな名跡の紹介に当てていたら、ずっと解りやすいはずなのだ。
同じ名前が何度も違うページで飛び交うと

「この人はだれだっけ?」

となる。そこを痒い所に手が届くつくりにしてあれば、すごくいい本だったと思うのだ。

落語を見に行くまでの、軽い贔屓ができるまでの行動とポイントに沿って構成した項目立て。そのあとの、落語の歴史や噺家さんの紹介。

落語にまつわる周辺ジャンルでのトピック。
そして作品と人物の簡単な名鑑。

雲田さんのインタビューは巻頭か巻末へまとめて、ずずいとお楽しみ…としたらすごくスッキリしただろう。

繰り返し言うが、丁寧に書かれているところと雲田さんのインタビュー。巻末の寄席情報の収集用まとめアドレスリストは、ちゃんと良かった。だから、紹介と言いながら新参者を排斥してるかなと感じたページだけは、飛ばして読んでしまっていい。

必要な情報を仕入れて、気分が盛り上がったら次の本、次の寄席、次の落語へのアプローチに自分で進めばいい。この本でPodcastもあるって知ったことやテレビで知っている噺家さんたちの芸風をそうかぁ…なんて知ったこと。逆にお若い噺家さんだけじゃなくてご年配のベテランさんもぜひ聞きたい!むしろ交互に聞きたいな…などと思った辺りこの本に対する収穫である。

私達新しいファンが入っていって何悪かろう。
読者諸氏よ、めげずに気になるページから
読むのだ!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年9月7日
読了日 : 2017年9月7日
本棚登録日 : 2017年9月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする