分子生物学を古代DNAに適用したパイオニアが書いた自伝的な本。古代DNAと言ってもネアンデルタール人みたいに数十万年前のものまで。それより古いとDNAは失われてしまっているそうだ。恐竜のDNAを復元したなんてニュースも昔あったが、それはとんでもない誤りだったそうで。そういった試行錯誤も込みでの科学の現場が描かれていて読み物として楽しめるし、分子生物学の知見や古代のDNAを復元するむずかしさについても興味深い。
ただ理論的なところについては、半分わかったものの半分はハラに落ちなかった感じ。PCR法の説明なんかも昔読んだ福岡伸一の本のほうが分かりやすかったので、引っ張り出して復習してしまった。時節柄、PCR法と言われると反応してしまいますしね。感度の高さ故、コンタミに気をつけなければならない手法であることを再認識。
分子生物学の手法についてのくだりを読んでいて痛感するのは、生物学もコンピューターサイエンスになりつつあること。生けるものは皆、4文字を組み合わせたコードでプログラムされた存在なのである。ナチュラリスト的な昔気質の古生物学に対する、著者のなかば憐れむような視線にはほろ苦さも感じる。
本書でも触れられているが、23andMeはサービスの中でどれくらいネアンデルタール由来の遺伝子を持っているか教えてくれる。ワタクシは23andMeのカスタマーの中では上位2%に入るらしい。だからどうしたという訳でもないが。ただ現生人類がネアンデルタール人と交配したのは出アフリカの後らしいので、アフリカ人にはネアンデルタール由来の遺伝子は見つかりにくい。ここらへんは色々センシティブになりうるので、著者もちょっと気を使っている様子がある。
- 感想投稿日 : 2020年4月25日
- 読了日 : 2020年4月25日
- 本棚登録日 : 2018年11月5日
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