ごん狐

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レビュー : 13
著者 :
booklog-userさん  未設定  読み終わった 

この話を有名にしているのは、不自然すぎるラストだろう。

「ごん、おまえだったのか。いつも、栗をくれたのは。」と問いかける兵十に、ごんが目を閉じたままうなずくシーンで、まずキツネが人間語を理解できているのは人間公認であったということに私たちは度肝を抜くのである。キツネがキツネである理由が一瞬にして崩れたこの世界をどう捉え直したものかと脳は発火する。だが哀れなシーンのため私たちは何に度肝を抜かれているのかを考えない。ただ衝撃だけを記憶するのである。

次に、兵十のこの台詞は、彼が状況を理解したことを読者に示す意図を以て書かれている独り言である。それに対してごんが返事をしていることに私たちは度肝を抜く。読者と文章との間に交わされた契約を物語のキャラクターが奪い去っていくというルールの破れに、今いたはずの世界を一瞬にして崩された脳は自分の立ち位置を探して発火するのである。だが哀れなシーンのため私たちは何に度肝を抜かれているのかを考えない。ただ衝撃だけを記憶するのである。

メタ発言のある漫画や小説は多かれど、このような方法で文章の規約の目をすり抜けることのできた話は大変珍しい。
内容としてはどうでも良いが、メタ認知のできる文章という意味では価値があったのかもしれない。

レビュー投稿日
2015年10月19日
読了日
2015年10月8日
本棚登録日
2015年10月8日
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