とにかく読みやすい。
この少し変わった設定を楽しめるかどうか、読む側の選択に任せているようにも感じた物語だった。
春は見たものは全て記憶してしまう。
だから余計なものは見ないように、普段はアイマスクをして生活をしている。
極寒の北海道・札幌で路上で全裸で死んだ男がいた。
この男はいったい誰なのか?
どうしてこんな住宅地で死んでいるのか?
そもそも何故全裸なのか?
謎を解くために根来と仲野は「変態の専門家」である春を訪ねる。
奇妙な遺体。
わけありげな遺体の発見場所。
春は判っている事実から何かのメッセージではないかと予測する。
超がつくほど変態だけれど、とにかく春が魅力的だ。
春を取り巻く志村家の人たちと根来たちの関係も、一般的には理解されにくい。
だからこそ家族の絆は強く深い。
誰にも人に言えないことのひとつやふたつはあるだろう。
人によっては他人から見れば笑い話のようなことを秘密だと抱えている人もいれば、シャレにならないような知られたら弱みにしかならないような秘密を抱えている人もいる。
弱みは他人に付け込まれるウィークポイントであり、下手をすれば身を滅ぼす火種ともなる。
人を操るにはその弱点を突くのが手っ取り早い。
それは理解できるのだけれど、信頼されていた人に裏切られるのはやっぱりキツいだろう。
春は裏切らざるを得なかった人間の心情までも想像できてしまう。
その立場や自己保身の感情も、理解したうえで許してしまう。
変態だけれど基本的に身近な人間に対しては優しいのだ。
唐突な終わり方にちょっと唖然とした。
犯人は確定しているし、どんな人間かもおおよそ見当がつく。
けれど敵の存在を大きくしすぎたせいか、中途半端な結末になってしまっている。
ひとつの事件を完全に解決したうえで、その根底にはまだ残っている大きな謎が…のようには出来なかったのだろうか。
次の作品では決着がつくのだろうか。
- 感想投稿日 : 2017年4月25日
- 読了日 : 2017年4月25日
- 本棚登録日 : 2017年4月25日
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