モロッコ水晶の謎 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2008年3月14日発売)
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本棚登録 : 1989
感想 : 132
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短編集。
有栖川が招かれたパーティで毒殺事件が起こる。
グラスの中に毒物を混入できたのは10人の中の誰なのか?
常識に囚われていたら絶対にこの事件は解明できなかっただろう。
週刊誌や月刊誌でも、朝の情報番組でも、占いは人気のコーナーだ。
信じているわけではなくても何となく見てしまう。
悪いことはきれいにスルーして、良いことだけは心に留めて。
一日が気分よく過ごせるための活性剤のようなものだ。
どうやら占いにもテクニックがあるらしい。
心理学の応用の場合もある。
誰にでも該当するような事柄をあげ、信頼を勝ち取っていく場合もある。
元々占いに本気で頼ろうとする人は、何らかの不安を抱えているのだろう。
だとすれば、その不安を取り除くことが占いの目的のひとつのような気がする。
要は依頼者が安心できればいいのだ。
だがそれは、あくまでも参考意見として聞く、というスタンスがあってこその話だ。
すべてを占いに頼りきり、信じきって物事を決めるようになったら、自ら危険区域に足を踏み入れているようなものだ。
犯人の純粋さが裏目に出たような結末は、すっきりとしないものを残した。
未熟な身勝手さと純粋さが引き起こした事件は、犯人が逮捕されても哀しさが残る。
「推理合戦」の物語の締めかた。
とても好みだ。
思わずにやりとしてしまうような、そんな終わり方は気持ちがいい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2017年4月22日
読了日 : 2017年4月22日
本棚登録日 : 2017年4月22日

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