容疑者Xの献身 (文春文庫)

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本棚登録 : 32488
レビュー : 2938
著者 :
林檎飴甘さん ミステリー   読み終わった 

無償の愛・・・という言葉がある。
はたして石神の花岡母娘に対する行為は無償の愛だったのだろうか。
もちろん、石神は花岡に対して特別な思いは持っていたと思う。
でも、それだけで犯行におよんだとは考えにくい。
もっと強烈な、石神自身の問題だったように感じた。
何も悪いことはしていないのに大学を追われ、教師としての情熱も持てずに、毎日を暮らしているだけの毎日。
花岡母娘に起きた不幸な出来事は、表現は悪いが石神にとっては「またとない機会」だったのでは?と思う。
誰かのために自分の知識を総動員して対応を練る。
頼られているという実感、自分の存在意義をはっきりと意識させてくれる日々。
死んだように過ぎていた時間が、再び動き出したような喜び。
石神の中にはそんな思いがあったようにも感じた。
湯川と石神の攻防が読み応え十分だった。
先の先を読み、事件のシナリオを書いていく石神。
そして湯川が解きほぐしていく石神のトリック。
どうやら「純愛」というのが物語のキーワードとして宣伝媒体に使われていたようだが、個人的にはちょっとした違和感があった。
石神の完璧な犯罪計画は、花岡母娘のためでもあったが、無意識だったとしても石神自身の存在価値というのが大きかったと思う。
石神が沈黙することで得られるもの。
それは、花岡母娘の脳裏から絶対に消えない自分の記憶・・・だった気がするから。
穿った見方だな、と思う。
もっと素直に「純愛」ってすごい!!という感想でもいいじゃないかと思う気持ちもあるけれど。
「ガリレオ」シリーズの傑作は、いろいろな受け取り方ができる奥の深い作品だった。

レビュー投稿日
2017年2月28日
読了日
2017年2月28日
本棚登録日
2017年2月28日
8
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