人は多面性のある生き物だ。
同じ人間でも、ある人にとってはこの上もなく親切で善良な人であり、ある人にとっても冷酷無比を絵に描いたように鬼のような人かもしれない。
「月琴亭の殺人」では、弁護士である森江が偽の招待状で月琴亭におびき出されるところから始まる。
そこで森江は、かつて苦々しい思いをした裁判関係者と再会する。
森江の他にも偽の招待状で館に集められたのは5名の男女。
状況的に大きな密室となってしまった館で殺人事件が起きてしまう。
「ノンシリアル・キラー」ではある人間が綴るブログに書かれた記事が描かれている。
電車内のトラブルで死亡してしまった女性にまつわる記事は、ある人への深い感謝と、どこの誰ともわからない人間への怨みが込められていた。
解決篇では、ふたつの物語を結びつける事実が明らかにされていく。
善良なだけの人間もいないかわりに、悪意だけの人間もいないのでは・・・と思う。
理不尽に虐げられた思いは、やがて危険な方向へと人を突き動かしていく。
どこが?と聞かれると困ってしまうのだけれど、何とも既視感のある物語だった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2017年4月5日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2017年4月5日
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