GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 (単行本)

  • 三笠書房 (2014年1月10日発売)
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久しぶりの、大当たりの本。付箋どころの話じゃない。

自分がその仕事をせずにはおれないという”意義”がポイント。「自分にとって意義のあることをする」「自分が楽しめることをする」この条件が満たされれば、ギバーは他人だけではなく、自分にも「与える」ことができる。自分が認識する「意義」のもとに、他者と自己が一体化するからだ。他者に対する共感と愛着が生まれる。こうなると、何のことはない、真のギバーはギブすることによって他者のみならず、意義に向かって仕事をする自分自身を助けているのである。(p010)

テイカーが、自分を中心に考えるのに対し、ギバーは他人を中心に考え、相手が何を求めているかに注意を払う。テイカーなら、得られる利益が損失を上回る場合にかぎり、相手の有利になるように協力する。一方ギバーなら、いつ何時も、損失より「相手」の利益のほうが上回るように手を差し伸べるのだ。いいかえれば、自分が払う犠牲はあまり気にせず、見返りをいっさい期待することなく相手を助けるということである。(p28)

ギバーが成功するときには、ギバー特有の現象が起こるのだ。その成功がまわりの人びとに波及していくのである。テイカーが勝つ場合には、たいていほかの誰かが負ける。調査によれば、成功したテイカーは妬まれやすく、何とかしてその鼻をへし折ってやろうと周囲から思われるという。ギバーは成功から価値を得るだけでなく、価値も生み出す。それがテイカーやマッチャーと違っているのだ。(p36)

テイカーが近づいてくるのが分かると、人は心のドアを閉ざして交流を拒み、協力も信頼もしないことで自己防衛する。こうされないように、テイカーは化けの皮をかぶって寛大に振る舞い、ギバーやマッチャーを装って相手のネットワークのなかにまんまと入りこもうとする。「一方でこびへつらい、一方でひどい仕打ちをする」。テイカーは部下に対しては支配的になるが、上司に対しては驚くほど従順で、うやうやしい態度をとる。(p069)

与えることは、とくにそれが首尾一貫している場合、グループ内のほかの人のギブアンドテイクのやり方をしだいに変えていく。つまり、与えることは「感染」するのだ。(p106)グループに一貫したギバーが一人いると、ほかのメンバーはより与えるようになる。ギバーは与えることを「当たりまえ」にし、グループ全体の利益を大きくしたのである。(p108)

寛大であることをモットーに人とかかわっていれば、見返りもおのずとついてくる(p112)

天才はテイカーになる傾向があり、自分の利益を大きくするために、ほかの人から「知力、エネルギー、能力を奪う」
天才を育てる人はギバーになる傾向がある。彼らは自分の「知力を使って」、ほかの人びとの「知性や能力を増幅して、ひらめきを起こし、アイデアを生み出し、問題を解決させる」(p116)

成功したギバーは、自分だけでなくグループ全員が得をするように、パイ(総額)を大きくする。ギバーが自分の利益よりグループの利益を優先すると、そのことが周囲に伝わる。その結果ギバーは同僚の尊敬を集めるようになる。(p133)

心理学者のエドウィンは、論文において、人がグループのなかで寛大に振る舞うと、「特定人物固有信用」を得ると主張している。これはつまり、グループのメンバーの心に積み立てられる、相手に対する信用のことをいう。グループのメンバーが、与えることによって「信用」を得ると、マッチャーはそのメンバーに、グループの規範や期待からはずれてもよいという許可を与える。ギバーとして信用を得ると、ちょっと大胆で挑戦的なアイデアを出しても、まわりに認められてしまうことが研究で明らかになっている。テイカーが改善策を提案すると、同僚はその意図を疑い、自分が得をするために違いないと決めつけることが判明している。(p136)

不利になったり罰せられたりする心配もなく、リスクを冒せること「心理的安心感」。このような環境を作り出せるのがギバー。このような環境では、人はより学習意欲が高まり、より新しいことにチャレンジできるようになる。(p145)

協力関係において、テイカー協力が「視点のズレ」を考慮することはまずない。自分の観点からしか物事を見ようとしないので、ほかの人が自分のアイデアや意見にどんな反応を示しているのか、結局気づかない。ギバーはみんなに得をさせたいと思っているので、人の身になって考える方法を見つけようとする。(p149)

周囲の人たちに大志を抱かせる天賦の才

知的な利他主義者は、知性に欠ける利他主義者より利他的ではないが、知性に欠ける利他主義者や利己的な人よりは健全だろう。ハーバート・サイモン(ノーベル経済学賞受賞者)(p249)

他者志向になるということは、受け取るより多くを与えても、けっして自分の利益は見失わず、それを指針に、「いつ、どこで、どのように、誰に与えるか」決めること(p255)

ギバーが燃え尽きるのは、与えたことよりも、与えたことでもたらされたえいきょを、前向きに認めてもらえていないことが原因。
ギバーひ与えることに時間とエネルギーをそそぎ込みすぎることで燃え尽きるのではない。困っている人をうまく助けてやれないときに、燃え尽きる。与えすかなたせいではなく、いくら与えても貢献できているように感じられなかったせい。(p264)

自分の幸せをかえりみず与え続ければ、精神的、肉体的健康を害するリスクが高まる。他人のことだけでなく、自分のことも思いやりながら、他者志向に与えれば心身の健康を損なうことはなくなる。(p267)

1日に一ずつ親切を与えるよりも、1日に五つまとめて与えた人のほうが幸福度が増した。自己犠牲のギバーは、相手に求められるまま、そのつどバラバラと与える傾向がある。このやり方は気が散りやすいうえ、疲労感も大きく、ギバーから必要な注意力と気力を奪ってしまう。(p269)

自己犠牲タイプのギバーは「支援を受けることに居心地の悪さを感じる」。彼らは助ける側の役割に徹しているので、他人に負担や迷惑をかけたがらない。他者志向のギバーより助けを受けることがはるかに少ない。そしてそれは精神的にも肉体的にもダメージをおよぼす。他者志向のギバーは燃え尽きそうになると人に助けを求め、やる気や気力を維持するのに必要なアドバイスや協力を仰ぐ。(p277)
ストレス反応には「ファイト・オア・フライト」(危機が迫ったときに、その場に留まって戦うか、その場から逃げるかというストレス反応)が関係している。燃え尽きると戦う気力がなくなるので、おのずと逃げるしか手がなく、ストレスの原因を避けることによって物事に対処しようとする。(p278)
人がストレスを感じると、脳は人と緊密に結びつきたいと思わせる化学物質を放出する。ギバーは疲れ果てると限られたエネルギーを、他者を助けることに注ぎ込む。直感的に与えることが関係を強化し、自分への支持を確立すると知っていて、実際に利用しているのは他者志向のギバーだけ。他者志向のギバーはサポートネットワークを築いて、助けが必要な時に頼ることができる。これが、まとめて与えるとともに、他者志向のギバーが自己犠牲をしているギバーよりも燃え尽きにくい理由。(p280)

多くのギバーを悩ませている3つの罠。信用しすぎること。相手に共感しすぎること。臆病になりすぎること。

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感想投稿日 : 2016年5月23日
本棚登録日 : 2016年5月21日

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