本書は、世界中の人がはなやかに祝うお祭りは、クリスマスだけということで、
各国のクリスマスの様子を紹介しながら、
クリスマスのなぜと歴史をひも解いていく。
文体は、著者がやさしく語りかけてくるようで読みやすい。
子どもの読者を想定しているのであるが、
中身はきちんと現地に行って体験したことに基づいて書いているので、説得力がある。
中身が大人にも通用するものをわかりやすくするのは、
完全に子供向けにするのとはまた違った技術が必要なのだと感じさせられた。
子供向けの本ではあるが、大人が読んでも楽しめる深みがある。
著者のほかの作品を読んだことがある方なら、
そこここに著者らしさを感じとるであろう。
児童文学作家としてイメージされる著者だが、
魔女に会いに行って本を書いたりもしており、取材本も読みやすい。
各国の今(といっても20年前ではあるけれど。)のクリスマスを紹介しながら、
サンタクロースやクリスマス・ツリーの起源などを紹介していく。
写真やイラストがふんだんに使われていて、眺めるだけでも雰囲気を楽しめる。
スウェーデンとフィンランドのサンタクロースの家にも訪問している。
オーストラリアの真夏のクリスマスも紹介されていて、
同じ日の正反対の季節を楽しめる。
著者の真骨頂は、最終頁にすべて詰まっている。
特に、最終パラグラフ。
なぜクリスマスの取材に行くのかというコタエが全部ここに入っている。
彼女がクリスマスと魔女に見た本質は同じだったのだ。
願うこと。そして、あちらの世界とこちらの世界をつなぐこと。
そして、そのようなまなざしを持ってクリスマスと魔女を見つめる
角野栄子さん自身が、願う人であり、つなぐ人なのだ。
- 感想投稿日 : 2010年11月13日
- 読了日 : 2010年11月13日
- 本棚登録日 : 2010年11月13日
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