“不機嫌な”太陽-気候変動のもうひとつのシナリオ

  • 恒星社厚生閣 (2010年3月12日発売)
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スベンスマルク理論について解説した本です。
定性的でデータは少ないですが、海外の論文を読むより理解が深まると思います。

過去の気温の変化を宇宙線の量の変化による、雲の量の増減で説明できることは理解できました。しかし近年の温暖化までも説明できるかは別問題だと思います。
地球温暖化の原因として二酸化炭素を重視しすぎていることには賛成ですが、これで全てが説明出来たとも思えません。更なる調査が必要だと思います。

以下まとめ

◯宇宙線
・超新星爆発により宇宙線(荷電粒子)を銀河中に撒き散らす。
・爆発による衝撃波で磁場が形成される。最初光速の1/30程度のスピードで原子状物質が拡散、磁場の中ではじき返され加速されていく過程で宇宙線が生成、光速に近い速度になる。10万年後に宇宙線の生成はピークに達し、10万年後までにエネルギーを使い尽くす。
・宇宙線は2回/秒程度人を通過している。
・宇宙線の平均寿命は1000〜2000千万ねんほど。

◯太陽風
・太陽から放出される荷電粒子の絶え間ない流れ。350〜750km/秒で宇宙線より遥かに遅い。太陽から2〜3日かかる。
・太陽の大気圏における磁気爆発により、質量放出と呼ばれる巨大なガスの塊が放出され、強烈な太陽風の噴出につながる。この時生まれる衝撃波が磁気の不規則性を生み、宇宙線に影響を与える。
・太陽風が太陽圏に行き渡り、宇宙線の量が減るまでに1〜2年かかる。

◯地球における宇宙線の防衛線
・太陽の磁気、地球の磁気、空気ど三つの遮蔽層により宇宙線は減少するため上空ほど多い。
・2番目の防衛ラインが地球の磁気。太陽風と激突すると磁気圏が変形し、磁気嵐によってオーロラが生まれる。
・地球の磁力線が地球表面に平行なほど宇宙線は高エネルギーでないと侵入できない。最も侵入しやすいのは磁極。
・25km程度の大気との衝突により一次宇宙線は停止すると共に多種多様な粒子シャワーを生成するが、ほとんどは大気の中で遮蔽され、ごく一部が低い高度まで到達する。
・宇宙船の強度は結合エネルギーが運動エネルギーに変換されることで地表15kmほどで約2倍になるが、それ以降大気に阻止されて、海面上ではピークの1/20まで弱まる。
・標高3600mのラパスは150mのリマよりも12倍宇宙線の強度は強いが致命的な影響はない。

◯地表まで届く電子ミューオン
・地球上に到達できるのは、宇宙線が大気に衝突した時に算出されるミューオンという重たい電子がほとんど(98%)
・電子より質量が200倍重く、寿命は1/200万秒しかなく、幽霊のようなニュートリノを2つ放出して1つの通常の電子となる。
・相対性理論によれば光速に近いミューオンは実質1/100万秒の寿命になり、海面まで到達できる。
・第一次宇宙線が大気と衝突きたときに大量に生まれる核力粒子パイオンが崩壊する時に生じる。

◯雲の影響
・雲による温室効果と、太陽光を反射することによる冷却効果のプラスマイナスは、入ってくる可視光と出て行く赤外線の収支になり、極めて複雑な計算となる。
・NASAの地球放射収支実験の結果、総合すると雲は巨大なクーラーだと分かった。薄い雲は例外で加温効果がある。
・低い雲が地球冷却の60%を占める。太陽光を遮るとともに暖かい上面から宇宙空間に効率よく熱を放出するから。特に重要なのは広く平らな毛布状の積層雲で、地球表面の20%を覆う(主に海洋上)
p.59-60に記載があるが文献なし

◯雲の形成(マクロ)
・湿った空気が冷やされると、水分が凝縮して雲ができる。しかし核となる極微細粒子が必要。これ自身も硫酸と水数分子から成る小滴。電子が分子の凝縮を促して種の形成を促す。
・ミューオンが大気中の低い雲の形成を助け、地球を寒冷化させる。p52ミューオンの割合
・高い雲の一部は温暖化効果、3000m以下は太陽光を反射し寒冷化
・宇宙線の量と雲量の相関、赤道上空を飛行する欧米日の静止衛星の雲の月間記録とコロラド州クライマックスのジョンシンプソンによる観測所の中性子月間平均数を選んだところ著しい一致(84〜90年)p62文献なし
・p68 雲の高度と宇宙線量の相関データ、低層まで届く高強度の宇宙線量、高度域にはいつも大量に存在するので変動の影響が小さい。

◯雲の形成(ミクロ)
・Charles Wilson x線照射により電荷を生むことが小滴生成につながることを発見、cloud chamber
・雲形成の核となる極微細粒子は100nmほど、工業地域では亜硫酸ガス。海上では、硫化ジメチルから作られた硫酸の小滴
・SKY実験装置により空気の状態を再現し、宇宙船による核の生成を実験で確認した。
・クラスター生成は電子が起点となり、触媒のようにO2, H2O, S02と結合し、H2SO4(硫酸)を作る。この硫酸が集まってクラスターが成長し、70個ほど集まると3nmほどになり検出できる。
・論文発表

◯実際の現象との対応
・4万年前のラシャンプ期には、地球磁場が弱くなったものの寒冷化しなかった。
・地球磁気の増減は2000m以下の低層でミューオンの量への変化に影響せず、寒冷化に影響しない。
・南極で温暖寒冷の逆転現象が見られるが、広大な雪面により、低層の雲により温暖化されるから。
・20世紀、宇宙線は減少しており、太陽の磁場は2.3倍強くなっており、温暖化0.6度は説明できる。

◯宇宙線の測定
・C14[半減期5730年]は参加されてC(14)O2となり、植物に取り込まれるが、その比率は変動するため時代の特定には向かない。大気と海洋の複雑な循環の影響も受ける。
・Be10は半減期が151万年と長く、長期の太陽活動の変動を見るのに向く by ベーア
南極やグリーンランドでアイスコアを調べることで効果してきたBeの量を見ることができる。宇宙線と太陽活動野相関が見える、p23
・高度の高いエリアでの影響観測となるため、太陽風と地球の磁場の影響を両方織り込んだ影響の観測になる。
・氷床コアから得られるO18からは温度分布がわかる。重酸素から成る酸素分子は通常のO16よりも蒸発や結晶化の動作が遅く、特に寒冷化では著しい。氷床に到達した降雪中の重い酸素の量は温度が低いほど少ない。
・宇宙線の流入量の系統的測定値は1937年までしか遡れない。

〇地球の磁場
・地球の磁場の変化はエドモンドハレーが発見した。
・地球の磁場はこれから千年以上かけて弱まり、反転するのではないかと考えられている。
・依然逆転していたのは78万年前
・磁場が弱まることによる天候への悪影響は無い。

◯南極
・雪面が太陽光を反射するため、他と違い雲が少しでもあるほうが、温める効果がある p78

◯炭酸ガスの影響
・MITの著名な気象学者Richard Lindzenは、2005年に、水蒸気と雲が一定なら、CO2が2倍になると物理学から直接的に平均1度の温度上昇を招く。(280-560ppm)

〇疑問
本当に低層の雲が支配的なのか?60%とという根拠が示されていない。
宇宙線との関係を示したのは海上のデータしかない
太陽の明るさの変化は1/1000程度しかないというのは本当か?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年5月9日
読了日 : 2020年5月9日
本棚登録日 : 2020年5月9日

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