アフターデジタルの二作目、コロナ後の状況を踏まえたアップデートが含まれている。
一作目はOMOとはなにか、特に中国での事例が面白かったが、本作はよりOMOの実践的な内容でかつ世界にも視野を広げた内容になっている。
日本のデジタル戦略については、特区限定でやってはいけないことを決めるブラックリスト方式に変え、マイナンバーを口座情報や医療教育に紐付けられるようにすることがまず起点だと思った。如何に民間が動ける状態にするか。
これからOMOビジネスを考えていく上で非常に参考になる本だった。そもそもデジタルから考え始めているところからしてずれている。どんな世界観で何を目指していくのか、その実現のためのUX設計において、オンライン・オフラインなくシームレスなデザインをしていくと自然とDXになるのであろう。
以下内容
◯アフターデジタル1の復習とアップデート
・社会に還元して初めてデータを預けてくれる。
・スーパーアプリの要素は決済、移動、コミュニケーション。決済はトランザクションから与信に繋げている。
・フーマーは18年に2300億円まで行ったが、飽和したようで失速→意外と小さい、こんなもんか
◯インドのGaaS
・デジタルIDを発行し、口座開設や携帯ゲット、身分証明、医療や教育を受けられるように
・オープンAPIの仕組みを作りビジネスプレイヤーを巻き込んだ。
◯アメリカのD2C
・GAFAの台頭により、彼ら中間レイヤーを挟まない直販が伸びている。SNSで世界観を伝えられる。
・テクノロジーを駆使しつつも単なる製品販売から顧客との関係を構築し、バリュージャーニー型に転換している点は似ている
・睡眠の質を上げることを掲げたCasperの新しいマットレスの売り方は世界観を売っている
◯中国から学ぶ
・ECから始まったアリババとゲームが売上の多くを占め、全てをコミュニーケーション化するミッションを持つテンセントは目指すところが異なるため、同じようなサービスでも使い分けが起こる。例えば送金はテンセントだと受け取りが必要だが、ECから始まっているアリババにはない考え方
・課題解決から入るアリババは、当社売り手と買い手の信用が無い中で仲介することで信用を作った。そこから決済を取るために、金利7%でまず預けてもらうことを行い、使い道を作るために加盟店を増やす、そのためにバーコードリーダーを無料で配った。
・ゲーム的なテンセントは中国のお年玉で、wechatから送れる機能を実装、グループに投下すると、早いもの順にランダムでお年玉を受け取れるようにしたところ大盛り上がりした。
・NIOは700万する会員チケットに車がついてくるイメージ、充電はパックごと交換、旅先ではフル充電の車がお出迎え
・ズールーはアパートをシェアハウス化したときの支払いの問題を解決したり、+8%で管理清掃してくれるサービスの提供でペインポイントを解決し、さらに宿泊用に貸したり、自社物件のホテルサービスも展開することでユーザーの住環境を多面的にサポート、長期で継続する関係性を構築している。
・衆安保険は新時代の保険OEM、各社が飛行機遅延や偽物交換といったサービスを作りたいときにすぐに作れる。アリババ、テンセント平安保険の合弁。こういうプラットフォームもあり。
・デリバリーでラッキンコーヒーにやられたスタバだが、専用配達員を用意し、50円配達料が高いが、ですぐ届けるようにしたところ盛り返した。サードプレイスの定義をいつでもどこでもと捉え直したのではないか?利便性はコピー可能だが、ブランドは模倣できない。
・wechatの中のミニアプリという形で提供すると、アプローチできる範囲が広く、かつコストも安い。だからこそスーパーアプリの存在意義は大きい。
◯日本の遅れ
・やっていいことを決めるホワイトリスト方式が、やってはいけないことを決める中国、米国のブラックリスト方式に比べて圧倒的に遅い。
・国ごとの違いとして3点あり、中国の事情としては、上述の国家運営体制のほか、経済構造(14億人といつ巨大マーケット、年収100万でも生活が成り立つからこその人件費の安いデリバリー)、文化背景(外食文化、年末の習慣)などがある。
・アフターデジタルの産業構造は、決済プラットフォーマー-サービサー-メーカー
◯行動データのUX活用
・データはそれだけではお金にならない、ソリューション(解釈)とセットで初めてお金になる。
・直感的に見つかるお金になる活用先はマーケティング、広告への利用、信用度を測る、交通や医療といったインフラ構築の材料
・自社で取れるデータだけで十分な場合も多い、大事なのはエクスペリエンス×行動データのループで、データをUXに還元すること。
・アフターデジタルで提唱するDXとは、デジタルとリアルから得る膨大なデータを使い、体験提供をすることで新たな顧客との関係性を考える活動、UXの変革が中心。
◯日本の勝ち筋
・おもてなしの本質は、世界観を見せること by 星野さん。
・クリスプ・サラダワークスは繁盛する実店舗飲食店が多忙な点を問題視、本当に人が付加価値を埋めるコミュニケーションにフォーカスするためできるだけそれ以外をデジタル化した。結果売り上げが伸びプラットフォームとしてシステムの外販もしている。
・Amazonの置き配は、盗難とモラルハザードを実証で確認した上で実装しているが、まさにユーザー、配達員の利便性を向上させた画期的な取り組み。
・世界観が共有された対話型組織で一人一人が自走しなければスピードが遅すぎる。それには世界観を発信する努力が必要、googleのTGIF、トヨタイムズ、書籍記事、zoom生配信など
◯UX企画
・世界観を作る、ビジネスモデルより先。こうすれば世の中をよくできる、こんなライフスタイルが素敵だろうといった共感や参画を生む提案。会社の系譜にあっているか?
・データは時系列で分析する必要がある、変化に注目: シーケンス分析。この時データから短絡的に施策を打つのではなく、なぜそのような行動をしたのかという理由と状況を考えて想像することが大事。集団として捉えていては見えてこない
・データに基づいてユーザーの状況を把握し対応する組織力が必要
・サービスビジネスでは、通常の期間損益の見方ではなく、顧客獲得コストをどのように売上で回収できているかというユニットエコノミクスが重要(18ヶ月以下が健全)
- 感想投稿日 : 2020年10月18日
- 読了日 : 2020年10月16日
- 本棚登録日 : 2020年10月18日
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