内地へよろしく (河出文庫)

4.78
  • (7)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 44
レビュー : 5
著者 :
吉田屋遠古堂さん 文学   読み終わった 

みずからも報道班であった久生十蘭が、海軍報道班として南洋を訪れた画家久松三十郎を通して、戦時下の人々の暮らしを語る。勇を誇るでもなく、時局を批判するでもなく、『戦争』を生きる人々。その淡々とした筆致の中におかしみや悲しみが浮きあがってくるのは、久生の筆力であろう。

『この世には、自分は少しも人の為にならず、人の犠牲や労力だけを思うさま受けて死んでゆくものも多いが、どん助にしろカムローにしろ、また磯吉にしても、自分のことはなるたけ身をちぢめ、ただもう人の為になるようにばかり生まれついて来た人たちなので、こういう人たちの徳がまだ脈々と日本の隅々を貫き流れている間、日本は断じて戦争には負けぬのだと思い、日本という国の人知れぬ成長の源をみるような気がした』

太平洋戦争を批判することも賛美することも簡単ではあるが、空虚な批判合戦をする前に、まずは『戦時下』を生きた人々と向き合い、みずからと向き合うことが大切なのではなかろうか?

レビュー投稿日
2015年7月26日
読了日
2015年7月26日
本棚登録日
2015年7月26日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『内地へよろしく (河出文庫)』のレビューをもっとみる

『内地へよろしく (河出文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする