少年向けのシリーズということもあり、やさしく書かれておりしごく読みやすい。それにしても、平易にやさしく書くのも文才が必要のはず。日高氏は、研究者としてすぐれているだけでなく、文章でも秀でていると思う。
アゲハチョウなどの研究について書かれている。いわゆる「チョウ道」の研究もある。チョウはどういう理由でそのルートを飛ぶのか?その考察、研究である。チョウによってその飛び方は異なるが、アゲハチョウの場合、野原などのひらけた場所を避け、樹々の緑に沿うように飛ぶ。また、その際、日陰よりも日当たりのほうを好むらしい。などの考察が、試行錯誤とともに語られる。
さらに、アゲハチョウのオスは、様々なチョウの中から、同種のアゲハチョウのメスのみをどうやって見分けるのか? の研究考察も。色、模様など様々なモデルを紙でこさえて、実際のオスにあてて反応を実験する。あらゆる可能性を考え、仮説を立て、実験を繰りかえす。なるほど、昆虫の生態に関する実験はこうやって行うのか、と感心する。
「あとがき」に以下の一節がある。
「ぼくが書きたかったのは、研究で何がわかったかということではなかった。/まだ研究のとちゅうにあることについて書きたかった。いろんな失敗や、ばかばかしいまちがいを書きたかった。」 …とのこと。
そういう思い、ねらいであるため、現在進行形の感じで、しかものびのびと書かれている。読んでいて楽しい本であった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
サイエンス
- 感想投稿日 : 2018年2月4日
- 読了日 : 2018年1月29日
- 本棚登録日 : 2018年1月26日
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