独房・党生活者 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店 (2010年5月15日発売)
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「党生活者」は再読。共産党員である私(佐々木)は、非合法活動を続けている。軍需工場の労働者をオルグしたり、ビラ原稿を書いたり日夜盛んに活動している。「連絡」も大変な仕事だ。なにしろ、携帯電話もメールもなかった時代である。仲間との「連絡」は直接会ったり、メモを手交するなどしている。しかも、警察に後をつけられないよう注意せねばならない。また自宅を急襲されないように、帰路回り道をしたり、神経をすり減らすような日々だ。そうした地下活動のピリピリした緊張感が全編に漲っている。エスピオナージ小説のようだ。
さて、かような地べたを這うような活動を、ストイックに描いているため、「蟹工船」のような“虚構性”(ファンタジーな趣)が希薄であり、その点は好感がもてた。
終盤、「私」らは、工場の臨時工を組織してストライキを打つべく画策。しかし、その直前、経営側はストライキの計画より1日早く動き、労働者たちの機先を制するのであった。

 「独房」は、云ってみれば党生活者たち版の「塀の中の懲りない面々」のような趣。留置場すぐ近くの家の娘さんが洗濯物を干す。その際独房から見上げると、ズロースの有無が大問題であるという話など、下世話なトピックも多い。息詰るような戦闘的生活というものでなく、その対極にある、日常のやわらかい息遣い、情感がテーマである。「こりゃ、怒られただろうな」と思いつつ読んだ。案の定、解説によると、当時、左翼陣営の一部からこっぴどくお叱り、批判を受けたという。
「党生活者」と「独房」、併せ読むと、そのふれ幅の大きさに苦笑する。

余談「…私この前ドストイエフスキーの『死の家の記録』を読んでから、そんな所で長い長い暗い獄舎の生活をしている兄さんが色々に想像され、眠ることも出来ず、本当に読まなければよかったと思っています。」という一節がある。(終章・60p) 「蟹工船」にも、『死の家の記録』への言及があり苦笑した。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・文学 (国内)
感想投稿日 : 2018年4月13日
読了日 : 2018年4月9日
本棚登録日 : 2018年4月4日

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