戦争と平和(一) (新潮文庫)

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本棚登録 : 1131
レビュー : 58
著者 :
制作 : 工藤 精一郎 
葡萄森兄夫さん 海外文学(古典)   読み終わった 

まずは、第一巻を読了。あまりにも大部なので、読み始めるまで大いに躊躇ったのだが、いざ読み始めると意外にスラスラといける。訳文がよいのか、あるいは原文そのものも平易なのかもしれない。

登場人物が多いと訊いていたが、確かに。 しかも、人物の動作や表情を詳細に丁寧に書き込んでいる。さらにその内面まで彫り込む。例えば、人物が邸宅に来訪し、玄関ホールから応接間や書斎へとやってくる、その情景を丁寧に書き込んである。成程この調子では、このボリュームになるわけである。

登場人物は大勢いるのだが、アンドレイとピエール、この青年二人に特に気持ちを寄り添って、読み進めることにする。二人は親友であるが、対照的な生き方を歩み始める。軍人の道を歩み始めるアンドレイ。一方、膨大な資産を受け継ぎ社交界に生きる一方で、自分の生き方を描けず思い悩むピエール。

第一巻では、主に以下の出来事が展開する。物語の舞台は、ペテルブルク、モスクワである。ピエールは、大富豪の庶子。ペテルブルクの街で無為な空騒ぎや悪戯をし、ときに舞踏会に出席しても居心地の悪さ、居場所の無さを感じている。ちょっとさえない青年である。だが、富豪の伯爵の死に際し、思いがけず膨大な遺産の相続人となる。そして周囲の態度が豹変。絶世の美女エレンとその父(ワシーリイ公爵)のアプローチを受け、ピエールは彼女に求婚、結婚する。(人物描写とエピソードの叙述が丁寧で緻密と先述したが、その一方で、上記の婚礼は1行で済ます。メリハリが利いていて小気味よい)

アンドレイはやはり裕福な貴族。出産間近の妻が居る。ナポレオンの立身出世、その生き方に密かに憧れ心酔している。人生の地平を切開かんとする野心、功を求める思いから、軍人(士官)としてロシア軍の戦列に加わる。終盤、ロシアとオーストリア帝国の同盟軍の戦線が舞台となる。そして、アンドレイらロシアの将兵の大軍は、オーストリアの北部アウステルリッツの地へ。ナポレオン率いるフランス軍との間に戦闘が始まる。史上有名なアウステルリッツの戦い(三帝会戦)である。この戦いでロシア・オーストリア同盟軍は、ナポレオンの巧みな戦術に粉砕され、ぶざまな敗退を喫す。ロシア軍はちりぢりになって敗走する。このアウステルリッツの戦い。地理的な位置関係や師団・部隊配置、戦術展開は、文章の叙述だけでは少々わかりづらい。それでも、唸りをあげて飛来する砲弾の恐怖、騎馬で突撃する士官アンドレイらの昂揚感や興奮は、臨場感を感じさせる。また、部隊の連携や連絡がおそまつで、体勢が崩れてゆく様を、将兵らの心理描写を織り込みながら描いて巧みである。さらには、戦地を離脱する敗残兵らの悲惨な様相も読ませる。

第一巻にして既に、重厚な読み応え感を感じている。
大部の小説であるが、じっくり味わいながら読みたい。

レビュー投稿日
2016年11月22日
読了日
2016年11月16日
本棚登録日
2016年11月5日
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